ヒマラヤの氷河消失速度が倍に、スパイ衛星で判明

8億人に直接的な影響が及ぶ恐れ、機密解除された米国の衛星写真を活用

2019.06.21
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今回調査した何百もの氷河の1つ、チャングリヌプ氷河。大部分で岩だらけの地表が露出している。エベレスト山頂が左後方に見える。(PHOTOGRAPH COURTESY JOSH MAURER/LDEO)
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 世界最高峰のエベレストをはじめ、7000メートル以上の山々がつらなるヒマラヤ山脈。その雪と氷の量は、南極と北極に次いで世界3位だ。そのヒマラヤから、大量の氷河が消えたことが判明した。2000年から2016年にかけて毎年、量にして75億トン、厚さにして43センチもの氷が解け続けたという研究結果が、6月19日付けの学術誌「Science Advances」に発表された。(参考記事:「レア写真:世界最高峰エベレストの威容、空からパノラマ撮影」

 これは1975年から2000年までの2倍のペースであり、氷の消失が気温の上昇とともに加速していることが浮き彫りになった。また今後、氷が消えることによって、ヒマラヤの麓のアジア各地に暮らす何億もの人々が水不足に陥る恐れもある。

 この論文は、過去40年間でヒマラヤの氷河に起きた変化を初めて包括的に調べた研究だ、と論文の著者である米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所のジョシュア・モーラー氏は言う。

「今回の研究は、気候変動による気温の上昇に伴って氷河が消失していることを明確に示しています」と話す同氏の推定では、過去40年間でヒマラヤから4分の1もの氷が失われたという。(参考記事:「エベレストの氷河縮小、登山家も証言」

 地上の観測所のデータを集めたところ、ヒマラヤの気温は、1975年から2000年の平均より1℃上昇したことがわかった。気温の上昇によってどれだけの雪や氷が解けるかを計算したところ、氷河をこれだけ大量に失わせるのに十分な上げ幅であることが確認された。(参考記事:「海面上昇の3分の1の原因は山岳氷河の融解、研究」

「1℃の上昇は、とても大きな変化です」と論文の共著者であるラモント・ドハティ地球観測所のイエルク・シェーファー教授は話す。「最終氷期の最中でさえ、年間平均気温はわずかに3℃低かっただけなのですから」

次ページ:米国のスパイ衛星が撮影していた写真で判明

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