太陽とワインの国ポルトガル、みんなが旅する理由

歴史ある街並みと太陽が降りそそぐビーチを満喫し、極上のポートワインで乾杯

2019.08.13
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思いにふける町:リスボン

 リスボンは、のりがパリッときいたワイシャツのような町だ。焼きたてのパンのにおいとすり減った石畳に誘われて町の通りを歩いてみた。エスプレッソに明るい挨拶、パステル・デ・ナタ(卵たっぷりのカスタード・タルト)で一日がスタートする。カフェのガラスカウンターにもたれかかる客に、柔らかい物腰のバリスタがたったひとり、慣れた様子で応対する。(参考記事:「ポルトガルから来た日本の「国民的」お菓子」

 さらに通りを行くと、巨人のようにそびえたつサン・ジョルジェ城が見えてきた。長い歴史を通じ、ケルト人やローマ人、ムーア人が、いずれも異なる時代にこの城を支配し、それぞれの痕跡を残してきた。特に印象に残ったのが、この町の持つ生命力だ。古く、色あせたなかにも活気がある。その大きさにとらわれて、細かいものをいくつも見逃した。過去と現在を行き来し、思いにふけっていると、美しい教会、噴水に飛び込んではしゃぐ大学生たち、ベレン宮殿の衛兵交代を目にして、ふと我に返る。現実に引き戻された私は、今度はどんなものが見られるだろうかと期待しながら、次に曲がる角を探した。(参考記事:「ローマ時代の地中遺跡を3Dで再現、ポルトガル」

地平線を照らす稲光:アレンテージョ

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ポルトガルのアレンテージョ地方には、コルクガシの森やローマ時代の遺跡、ブドウ園、そしてワインの醸造所がある。(PHOTOGRAPH BY FRANCESCO LASTRUCCI)

 五感にやさしいアレンテージョ地方のなだらかな丘陵地帯を、車で走り抜けた。木々の間をぬって、太陽の光が差し込む。野原には、まるで亡霊のように眠る1頭の白い牛、そしてドングリを探すブタたちの姿があった。ドングリ(ベジョータ)を食べたイベリコ豚のハムには、ナッツのような独特の味わいがある。丘に点在する城や教会は過去の遺物だが、今なお強い存在感を放っている。旅行シーズンのピークを過ぎたばかりで、町の通りに人の姿はほとんど見られない。ただ、パブからの帰りなのだろうか、がっしりとした体つきの男ふたりが歩いているだけだった。

 モンサラーシュ郊外にある農場「サン・ロウレンソ・ドゥ・バーホカル」の私道には、両脇にオリーブの木が立ち並んでいる。オーナーによると、なかには樹齢1000年を超すものもあるという。節くれだっているが今も実を落とす1本の木のそばに、5000年前の新石器時代の巨石が立っていた。この古木と巨石は、何世紀もの間、互いにどんな会話を交わしてきたのだろうか。やがて雨雲が現れると、ラベンダー色に染まった空を背にしたモンサラーシュの町が、まるで幽霊のように丘の上に座っているのが見えた。稲妻が光り、一日の終りの光が不吉な積乱雲の間をぬって地上に到達しようともがいている。

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アレンテージョの中心に位置する「サン・ロウレンソ・ドゥ・バーホカル」は、元々家族経営の農場だったが、今ではホテル、ワイン醸造所、そしてエコフレンドリーなリゾートに生まれ変わった。乗馬、ワインの試飲、スパなどが楽しめる。写真は、敷地内に立つ新石器時代の巨石。(PHOTOGRAPH BY ANNE FARRAR)

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