気候変動による海面上昇は既に多くの沿岸都市を脅かしている。しかし、写真の米領サモアとサモア独立国は、地震の影響により、海面水位の上昇が長期間にわたり速まるという問題にも直面している。(PHOTOGRAPH BY ANDRE SEALE/ VWPICS/ ALAMY)
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 2009年9月、南太平洋のサモア諸島沖でマグニチュード8.1という大きな地震が発生した。地震による津波で、サモア独立国、米領サモア、その他付近の島々は破壊され、180人以上の死者が出た。

 ところが、不運はそれだけではなかった。地震の影響で、5万5000人以上が住む米領サモアでは世界平均の5倍の速度で海の水位が上昇しているのだ。この研究結果を報告する論文が、5月25日付けで学術誌「Journal of Geophysical Research:Solid Earth」に発表された。

 サモア諸島は、世界中の島や沿岸地域と同様、地球温暖化による海面上昇に直面している。おまけに、大地震の影響で地盤が沈下し続けているという。状況は特に米領サモアで深刻だ。気候変動による分に加え、50~100年後には島の地盤が30~40センチほど沈下するせいで、海面の水位がさらに上昇すると予測された。(参考記事:「気候変動 瀬戸際の地球 沈みゆくキリバスに生きる」

 巨大地震の影響は場所によって異なるが、沿岸部ではこのように、海面の水位が長期にわたり上昇することもあるという事実はあまり知られていない。その問題に焦点を当てたのが、今回の論文だ。

 研究を率いたオーストラリア、ニューキャッスル大学のハン・シンチャン氏は、海面上昇に関する地元政府の文書について、「気候変動問題はよく議論されていますが、地震とそれに関連する地盤沈下の影響に関しては見過ごされがちです」と語った。(参考記事:「気候変動、最新報告書が明かす5つの重大事実」

「とても重要な問題で、ぜひ取り上げるべきです」と、ニュージーランドにある地球科学コンサルタント会社「GNSサイエンス(現地マオリ語でテ・プ・アオ)」の地球物理学者ローラ・ウォレス氏も同意する。「サモア諸島などでは、相対的な海面水位の変化に大きな影響を与えます」。なお、ウォレス氏は今回の研究には参加していない。

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