近絶滅種
絶滅の可能性が非常に高い動物は、「近絶滅種(Critically Endangered)」に分類される。このカテゴリーに属する動物には、森林の伐採や農業などで生息地を破壊されたスマトラサイ(Dicerorhinus sumatrensis)やスマトラオランウータン(Pongo abelii)がいる。(参考記事:「オランウータン 樹上の危うい未来」)
野生絶滅種
原産地にはすでに存在せず、動物園や繁殖施設などの飼育された環境でのみ生息する種をさす。1987年には、最後まで野生で生き残っていたカリフォルニアコンドル(Gymnogyps californianus)27羽が飼育環境に移され、「野生絶滅種(Extinct in the Wild)」となった(飼育された個体が野生に戻されているため、現在は野生絶滅種から近絶滅種に変更されている)。
グアムクイナ(Hypotaenidia owstoni)という飛ばない鳥は、米軍によって偶然グアム島に持ち込まれたミナミオオガシラ(Boiga irregularis)という外来種のヘビによって、絶滅寸前に追い込まれた。グアムクイナは現在、ピッツバーグの国立鳥園などの飼育下でのみ生息している。(参考記事:「毒餌ネズミを空中投下、グアムの蛇対策」)
地域絶滅種
IUCNのレッドリストには含まれない区分だが、一部の原産地で見られなくなった動物は「地域絶滅種(Locally Extinct)」と呼ばれる。たとえばハイイログマ(グリズリー、Ursus arctos horribilis)は、カリフォルニアでは絶滅しているものの、ほかのエリアでは今も野生に存在する。
米国のニューイングランド地方では、冬に雪が少なくなったことで、ある種のダニの生存期間が以前よりも長くなった。そのせいで一帯のヘラジカ(ムース)の数が激減している。痩せこけ、毛が抜け落ちてまだら模様になった体で歩き回る“ゴースト・ムース”は、まるで森をさまよう屍のように見える。
低危険種
絶滅のおそれがないと評価された種は、IUCNでは「低危険種(Least Concern)」に分類される。
たとえば、アメリカナキウサギ(Ochotona princeps)がそうだ。寒い場所を好むアメリカナキウサギは、気候が温暖化するにつれ、標高の高い場所へ移動していると誤って報じられることも少なくない。米西部のグレートベースン地域内には、アメリカナキウサギが地域的絶滅状態にある場所が幾つか存在するのは確かだが、学術誌「Arctic, Antarctic and Alpine Research」に発表された2018年の調査によると、この種は適応力が高く、今も同地域全体に生息しているという。
「ナキウサギは非常に耐久力に富んでおり、標高が低く温暖な場所で暮らしている例を見つけるたびに驚かされます」と、IUCNウサギ目専門グループの副長アンドリュー・スミス氏は言う。(参考記事:「ナキウサギ、“食糞”で温暖化に適応」)
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