南極半島に近い小さな島で、巨大な首長竜の化石が発掘された。エラスモサウルスの仲間で、このグループで史上最重量という。
何十年も悪天候と格闘したすえに、ようやく掘り出された今回のエラスモサウルスは、生きていたときには15トン近くの体重があったと見られる。しかも、南極で発見された古代の爬虫類では、最も完全な形に近いものの1つだ。5月17日付けの学術誌「Cretaceous Research」に研究成果が発表された。(参考記事:「知っているようでホントは知らない? 「恐竜」って何者?」)
エラスモサウルス科は首長竜の1グループ。首長竜は恐竜時代の海に暮らした爬虫類で、一般に、キリンのような首とヘビのような頭、体には4つのヒレをもつ。(参考記事:「首長竜は胎生だった? 化石から胎児」)
調査チームは、今回新しく発見された化石はアリストネクテス属ではないかと考えている。この属は、エラスモサウルス科の中でもかなりの変わり者として扱われてきた。というのも、米国で発見されているエラスモサウルスとあまりに異なるからだ。アリストネクテス属は南半球で発見されており、短めの首と、大きめの頭骨が特徴だ。
「アリストネクテスがエラスモサウルスなのかそうでないのか……長年、謎でした」と話すのは、今回の論文の著者で、アルゼンチン国立科学技術研究会議(CONICET)の古生物学者、ホセ・オゴルマン氏だ。同氏はブエノスアイレス近郊のラプラタ博物館を拠点としている。「誰にもわからない、変わった首長竜だったんです」
その答えを知るためには、もっと完全な標本が必要だった。米国パデュー大学のウィリアム・ジンスマイスター氏は、その候補となる化石を1989年に発見していた。南極半島北端のやや南に位置するシーモア島に遠征したときのことだ。だが彼には当時、その化石を発掘するための資金がなかった。そこで、アルゼンチンの研究者たちに発見を知らせたのだ。
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