受精から5日後の胚で、嚢胞性線維症の遺伝子検査を行っている顕微鏡写真。研究者らは、遺伝性の病気を治療するため、遺伝子編集など様々な技術を用いている。しかし、最新の研究が示すように、ヒトゲノムに次世代にまで遺伝する編集を加えることは、予想もしないリスクを生む恐れがある。(PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSHWAGER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 2018年11月、中国の研究者、賀建奎(フー・ジェンクイ)氏が世界で初めて、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)と呼ばれるゲノム編集技術を使ってDNAを編集した双子女児の誕生を発表し、世界に衝撃が走った。賀氏は、エイズウイルス(HIV)の感染リスクを下げるためだったとしているが、発表されたとたん、人間に対して遺伝子操作技術を使うことへの倫理的・医学的論争に火が付いた。(参考記事:「生命を自在に変えるDNA革命」

 そして今度は、このゲノム編集によって双子の寿命が縮められてしまったかもしれないという研究結果が発表された。

 米カリフォルニア大学の研究者らが英国の遺伝子データベースを分析したところ、賀氏が双子のDNAに加えた改変とよく似た遺伝子型の人は、そうでない人と比べて、76歳になる前に死亡する確率が平均して21%高いことがわかったのだ。この研究は、6月3日付けで学術誌「Nature Medicine」に発表された。

 論文の共著者でカリフォルニア大学バークレー校の生物学者であるラスムス・ニールセン氏は、「ひとつの遺伝子が変わった影響はひとつだけと考えがちですが、実際には複数の影響をもたらす場合があります。人間の遺伝子を編集する場合、検討すべきことは山のようにあり、その結果を予測するのは困難であるという点も非常に重要です。ある状況で有利となる遺伝子型が、別の状況では逆に不利になることもあるのです」と話す。

医学的に必要ない措置

 2018年の公式発表で賀氏は、エイズウイルスへの耐性をつけるために、CCR5をつくる遺伝子を編集したと言った。CCR5は免疫細胞の表面の受容体で、免疫システムの働きに重要な役割を担っている。エイズウイルスが免疫細胞に感染するときに結び付く受容体だ。

次ページ:遺伝子の機能を失わせる編集

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