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森林火災の現場にパラシュートで降りていく「スモークジャンパー」と呼ばれる消防隊員たち。隊員のマット・オークリーフのバッグに装着したカメラで撮影。彼らの使命は、手がつけられなくなる前に、火を抑え込むことだ。

 米国アラスカの夏空に太陽がまだ輝いている午後9時47分、火災の一報が飛び込んできた。サイレンが鳴り響き、8人の男たちが着替えのためにロッカーへ急ぐ。彼らは、森林火災の現場上空からパラシュートで舞い降りる「スモークジャンパー」と呼ばれる消防隊員だ。

 サイレンが鳴り始めて2分後、彼らは重さ50キロ近い装備や補給品を身に着けて滑走路を歩き出す。荷物が多すぎるように見えるが、携えているのは慎重に選ばれ、長年かけて有効性が証明されてきたものばかり。人里離れた危険な森林で火災と闘い、生き延びるためには欠かせないのだ。カーキ色の一団が一列になって輸送機に乗り込む。

 スモークジャンパーが誕生するきっかけは、1937年8月に米国イエローストーン国立公園の少し東方で、1本の木に雷が落ちたことだった。落雷で発生した小さな火の手は、「ブラックウォーター・ファイア」として知られる大火災へと発展し、15人の消防隊員の命を奪うとともに、700ヘクタール近くを焼き尽くした。米国農務省森林局は、調査の結果、こうした悲劇を避けるには火災がまだ小規模なうちに、隊員を派遣して鎮火させるしかないという結論に達した。

 そこで、森林局は少人数のチームを辺地にパラシュート降下させることが可能かを検証し始め、1940年7月12日、スモークジャンパーの第1陣がアイダホ州ネズパース国有林に配備されることになった。その後の数十年間に、森林局はアラスカ州とハワイ州を除く全米本土に7カ所のスモークジャンパー基地を、また内務省土地管理局は二つの基地(うち一つはアラスカ州にある)を開設した。現在は450人ほどのスモークジャンパーが活動中で、これらの基地から森林火災の現場に派遣されている。

選ばれるのはアドレナリンを制御できる人

 アラスカのスモークジャンパーの訓練は世界屈指の厳しさだ。毎年100~200人の出願者がいるが、新人訓練に選抜されるのは10人ほど。合格するには、原野での消火活動の経験が5~10年あり、腹筋60回、腕立て伏せ35回、懸垂10回ができることに加え、2.5キロを9分30秒以内か5キロを22分30秒以内で走破し、さらに重さ50キロの荷物を55分以内に5キロ先まで運べなければならない。現役の隊員も同様のテストを毎年クリアしなければ、職にとどまることはできない。

「ストレス下でも任務に当たれる人しか選びません」と、新人訓練教官だったロバート・イエーガーは言う。「冷静さを失わず、不安を打ち消し、アドレナリンを制御できる人で、命を懸けた挑戦に進んで応じる人だけです」

 結局、最初に出動した8人のスモークジャンパーはイニアクック湖畔の火災現場で16日間を過ごした後、解放された。その火事では1万4000ヘクタール以上が焼けたが、周辺の建造物はすべて守られた。

※ナショナル ジオグラフィック6月号「森林火災に飛び込む消防隊」では、「スモークジャンパー」と呼ばれる森林火災の精鋭たちに密着しました。

文=マーク・ジェンキンス/作家