ゾウの密猟、地域の貧困と汚職と強く関連、研究

中国における象牙の需要とも相関、「人権と社会正義の問題」と専門家

2019.05.31
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
象牙を目的としたアフリカゾウの密猟は今も続いている。新たなデータから、取り締まりの強化だけでは保全には不十分らしいことが分かった。地球上で最大の陸上哺乳類を守るには、貧困の改善も欠かせない。(PHOTOGRAPH BY BEVERLY JOUBERT, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
[画像のクリックで拡大表示]

 アフリカ、タンザニア中南部にあるルアハ・ルングワ生態系のゾウの減り方は衝撃的だった。公的機関の推計では、2009年の約3万4000頭から、2014年には8000頭まで減ったとされる。

 主な原因は、象牙目当ての密猟だ。したがって、ゾウが殺される場所と、目に見える形での取り締まりの間には関連があるはずだ。ドイツ、フライブルク大学の生物学者であるセベリン・ハウエンシュタイン氏は直感した。(参考記事:「ゾウの60%が消えたタンザニア、その原因は」

 密猟されたゾウの死骸は、密猟を取り締まるレンジャーの基地からずっと遠いところで多く見つかるだろうというのが氏の考えだった。ところが、かつてゾウが豊富にいたルアハ・ルングワ生態系のデータを処理して驚かされた。相関がまったく見られなかったのだ。(参考記事:「史上最大のゾウ調査、アフリカ上空を46万キロ」

 そこで、さらに細かくデータを検討した。すると、大半のレンジャー基地で、密猟のパターンは予想通りだったものの、なかには逆の場所もあった。基地のすぐ近くで死骸が発見されていたのだ。これが次の直感につながった。これらの基地では、レンジャーが密猟に関わっているのではないか、と。

 ハウエンシュタイン氏らは、密猟のパターンは大陸のどこでも同じわけではなく、同じ地域の中ですら異なるという認識に至った。むしろ、ある場所でゾウの密猟が起こる可能性は、少なくとも部分的には、地域の諸事情と関連があるのかもしれなかった。(参考記事:「牙のないゾウが増えている、原因は密猟」

 実態を調査すべく、ハウエンシュタイン氏は、英ヨーク大学、国連環境計画(UNEP)の協力者とともに、サハラ砂漠以南の53カ所での年間の密猟率と、その環境、経済、社会、政治的要因に関する情報とを比較することにした。結果、アフリカゾウの密猟は減っており、中国における象牙の需要の低下と相関していることが明らかになった。また、地域における密猟率は、貧困と汚職と強く関連しているという。この論文は、5月28日付けの学術誌「Nature Communications」に掲載された。

次ページ:取り締まりを強化しただけでは解決しない

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    記事が全て読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2019年6月号

観光と動物とSNS/センザンコウ 密売の実態/密猟と闘う女性レンジャー/生命を育む“海藻の海”/森林火災に飛び込む消防隊

特別レポート「動物たちの悲鳴」ではSNS人気の影で過酷な環境下に置かれる動物たち、密猟を撲滅すべく立ち上がった女性レンジャーの奮闘ぶりなど、動物たちを取り巻く様々な問題を総力取材。この他、スモークジャンパーに密着した「森林火災に飛び込む消防隊」など特集5本を掲載。

定価:本体1,028円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加