オーストラリア、キャンベラ周辺の草原で、あわてて逃げだそうとするメスのグラスランドイヤレスドラゴン。(PHOTOGRAPH BY DR. LISA I DOUCETTE)
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 オーストラリア南東部にわずかに残る草原に、小さなトカゲが生息している。体重10グラムにも満たないこのトカゲは、平原の極端な気温変化を穴の中でやり過ごしている。

 このトカゲの英名は「グラスランドイヤレスドラゴン(草原の耳なし竜)」。耳がうろこで覆われていることから名付けられた。人目を避けるような生態と見た目のせいで、見つけるのは非常に難しいと、オーストラリア、キャンベラ大学の生態学者ウィル・オズボーン氏は言う。実際、あまりにも見つけづらいため、1991年にオズボーン氏らが再発見するまで約30年もの間、このトカゲの観察記録は更新されなかった。

 グラスランドイヤレスドラゴンは長らく単一種だと考えられてきたが、実際には複数の種である可能性が明らかになった。5月22日付けで学術誌「Royal Society Open Science」に発表された論文によると、オーストラリア南東部の複数の場所で採集・所蔵されていたこのトカゲの標本について、解剖学的調査とDNA分析を行った結果、地理的に離れた各個体群は互いに異なる種であることが示唆された。

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「見た目は大変よく似ていますが、背中のうろこの種類と頭蓋骨の形に、はっきりとした違いがあります」とオーストラリア、ビクトリア州の博物館などを運営する機関「ミュージアム・ビクトリア」の分類学者で、論文の著者であるジェーン・メルビル氏は説明する。

 論文は、グラスランドイヤレスドラゴンを4種に分け、それぞれの違いを初めて明確にした。その中の1種「ビクトリアグラスランドイヤレスドラゴン」については、1969年以降、野生での信頼できる目撃情報はない。この種はもともと1940年代にメルボルンの近くで見つかったものだが、メルビル氏によれば、「残念ながら、発見場所の多くが現在はメルボルンの市街地になっており、それ以外の場所も農地に変えられています」

次ページ:「絶滅した可能性が非常に高い」

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