需要高まり絶滅危機、センザンコウ密売の実態

個体数が激減した最大の要因はうろこ

2019.05.30
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ジンバブエの保護センターで、アリやシロアリを探すサバンナセンザンコウの「タムダ」。センザンコウのうろこは違法に取引され、アジアで伝統薬として使われる。タムダも密売人の元から救出された。PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON

 系統的にはクマやイヌに近く、分類上は独立した目を形成するセンザンコウ。地球上で唯一無二の生き物だ。世界に8種おり、うち4種がアフリカ、4種がアジアに生息しているが、どれも違法取引で絶滅の危機にさらされている。

 センザンコウ全8種の国際取商引は禁止されている。しかし少なくとも6大陸の67の国と地域が取引に関わっていて、その大部分が中国へ送られている。個体数が激減した最大の要因はうろこの需要だ。

 北京を拠点とする中国生物多様性保護・緑色発展基金会(CBCGDF)が発表した2016年の報告書によると、センザンコウのうろこを使った治療が認められている中国では、200を超す製薬企業が、うろこを含んだ伝統薬を60種類ほど製造している。製薬企業が省から使用承認を受けているうろこの量は年平均26.6トンで、およそ7万3000匹分に相当する。

 しかし、中国が1994年から2014年までの21年間に輸入したセンザンコウのうろこは15トン近いという報告がある。製薬企業の需要を満たすにはまったく足りない量だ。

 中国国内で激減する前に採取されたうろこと、国際取引禁止前に輸入されたうろこは、今でも合法的に利用できる。製薬企業はこれらの入手先に限定するという建前で、薬の製造を続けたが、省政府は企業が使っているうろこが古い在庫なのか、新しく密猟されたものなのかを確認しないという。

 2017年、中国税関は12トン近いうろこを押収した。およそ3万匹分のセンザンコウにも相当する量で、1回の押収量としては過去最大規模だった。2018年には、香港税関が中国向けの貨物からうろこ7トンを押収している。

うろこの効能、科学的な証明なし

 センザンコウのうろこの消費量が最も多いのは中国だが、うろこが不可欠というわけではない。そう話すのは、サンフランシスコにあるアメリカ中国伝統医学大学で副学部長を務めていたスティーブ・ギブンだ。ギブンは、中国伝統医学で扱う植物、鉱物、動物の素材に関し、患者の状態に合わせて少なくとも125種類の代用品を特定している。「センザンコウを医療に使わなければならない理由はどこにもないんです」とギブンは言う。

 これまでのところ、西洋医学の研究でも、センザンコウのうろこの効能は確認されていない。うろこの成分は爪や髪、サイの角と同じケラチンで、人体の生理機能には何ら作用しない。それでも中国の伝統医学書では、体の不調に効果があるとされている。

 伝統医学に頼る人は世界にたくさんおり、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類に中国伝統医学が正式に採用されたことで、その数はますます増えると予想される。それだけに、うろこの代用品の存在を医療関係者や患者に知らせることが、センザンコウの絶滅を防ぐうえで重要だとギブンは強調する。

※ナショナル ジオグラフィック6月号「センザンコウ 密売の実態」は、伝統薬の材料に利用され、絶滅が危ぶまれるセンザンコウの密売の実態に迫ります。

文=レイチェル・ベイル/英語版編集部

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