ピーコックスパイダー(孔雀グモ)はハエトリグモの仲間だ。大きさは指先ほどしかないが、愛嬌のある顔、凝った求愛行動、忍者のようなジャンプなど、いろいろな理由で注目されている。
このクモの仲間は、オスが極彩色の腹部を見せつけるように振って求愛することでも知られる。オスの腹部には、青や紫、金、赤といったド派手な色が並ぶ模様がある。そして、これら鮮やかな色彩の間には「スーパーブラック」と呼ばれる真っ黒な部分がある。(参考記事:「なぜか高齢なメス選ぶオス、クモで判明、利点なし」)
何のためにこんな真っ黒な部分があるのだろう?
その答えが、2019年5月15日付けで学術誌「Proceedings of the Royal Society B」に発表された。2種のハエトリグモが持つ真っ黒な模様に関する論文の著者である米ハーバード大学の大学院生ダコタ・マッコイ氏は、「明るい色をスーパーブラックで縁取りすると、まったく違って見えます」と話す。
「黒は周囲の色を強調して、色彩の美しさを際立たせているのだと考えています」(参考記事:「「孔雀グモ」、派手な求愛は命がけの進化の産物」)
ほぼ完全な「黒」
研究チームによると、クモの腹部にあるスーパーブラックの光の反射率はわずか0.5%未満で、光を吸収してほとんど反射しない。ほぼ完全な黒と言っていい。
クモの黒い部分の光の吸収率は、極楽鳥とならび、自然界で一二を争うほどだ。そして、極楽鳥もオスが派手な色を使って求愛行動をとることが知られている。 (参考記事:「発見! 軽やかに踊る新種の極楽鳥」)
マッコイ氏の研究チームは近年、極楽鳥のオスに見られる同様のスーパーブラックに関する研究を行ってきた。その結果、その黒さは、入射光の大部分を閉じ込める微細構造によるものだということがわかった。この構造が、真に黒い面を作り出すのに一役買っている。
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