声明には、「新たな発見を踏まえ、フランス政府は今回の驚くべき現象を調査し、理解を深めるためにあらゆる手を尽くしています。また、これによって予測されるリスクを特定し、回避するために必要な対策を講じるつもりです」と書かれている。
マヨット島の群発地震について調査していた英インペリアル・カレッジ・ロンドンの地震学者スティーブン・ヒックス氏は、この謎の現象に何カ月もおびえてきた島の住民も、これでようやく安心できるだろうと語る。
4000年以上を経て、それは突然始まった
マヨット島が属するコモロ諸島は火山島だが、噴火は4000年以上起こっていなかった。ところが2018年5月から、マヨット島周辺の地質活動が突然活発になった。マグニチュード3.5の地震が実に1800回以上記録されたのである。島自体も、同年7月中旬から、東へ向かって毎月1.5センチ移動し、1センチずつ海に沈んでいる。
そして11月、奇妙な地震の波が発生した。20分以上も続いたが、先に書いたように、あまりに低周波だったために揺れを感じた人はいなかった。ただひとり、「@matarikipax」というアカウント名を持つ地震マニアだけが、米国地質調査所のリアルタイム地震観測モニターに、奇妙なジグザグの波形が記録されているのに気づいた。その画像をツイッターに投稿すると、世界中の科学者が飛びついた。
「明らかに、心配でもあり、かつ魅力的でもある出来事でした」と、調査チームの一員で、IPGPの海洋地震学者であるウェイン・クロフォード氏は言う。「それまで誰も見たことがないものでした」
その当時から、群発地震も謎の地震波も、マグマの動きと関係があると専門家は結論付けていた。おそらく、群発地震はマグマが地下を移動したせいで起こり、低周波の波はマグマ溜りが崩壊したために発生したと考えていた。
火山活動とこれらの現象との関連は、2019年2月に論文投稿サイト「EarthArxiv」に発表された査読前の論文でも支持されている。論文は、観測史上最大級の海底火山活動により、巨大なマグマ溜りからマグマが抜け始めたことが群発地震の原因であるとしている。
しかし、海底を震源地とする地震の観測は十分ではなく、噴火の直接的な証拠もない。したがっていまのところ、これ以上詳しいことは言えない。
大西洋のホットスポットの可能性
2019年5月16日、フランスの共同声明発表に合わせて、調査に関わっていたパリ地球物理学研究所のロビン・ラカシン氏は、ツイッターに2枚の画像を投稿した。そのうち1枚は、新しく誕生した火山のエコー画像だった。エコー画像は、イルカが周囲の環境を音波で探知するのと似た仕組みにより得られる。
「妊婦が受ける超音波検査と同じようなものです。ただこちらのほうが、もっと大まかなだけです」と地球物理学者のルシル・ブルハット氏はツイッターで説明した。なお、ブルハット氏は研究チームの一員ではない。