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タイのバンコク近郊にあるサムットプラカーン・ワニ園&動物園では、4歳になるゾウのグルアイ・ホムが鎖でつながれている。腫れた右の前脚に体重をかけずに立つ姿や、床に寝ることでついたこめかみの傷が痛々しい。PHOTOGRAPH BY KIRSTEN LUCE

 外国旅行をする人の数は、今や15年前の2倍。急成長を遂げる世界の観光産業のなかでも、動物との触れ合い体験は巨額の利益をもたらす目玉事業だ。フェイスブックやインスタグラムなどのインターネットの交流サイト(SNS)が、そのブームに火をつけた。

 自撮りをするバックパッカーや観光バスに乗るツアー客、さらにはSNSを通じて情報を発信し、人々に大きな影響を与える「インフルエンサー」によって、旅先での体験は瞬時に世界中と共有される。20~30代の若い世代は、ほとんどが旅行中にSNSを利用している。彼らの自撮り画像は、インターネット上で一気に拡散される強力な宣伝ツールだ。それを見て、さらに多くの人々が触発される。

 だが、ネット上に膨大な画像があふれていても、レンズの向こうに潜む現実は写っていない。アトラクション施設の動物の多くは、過酷な生活を強いられていることに、人々は気づかないのだ。

 私は世界各地を回り、飼育下の動物を眺めている観光客を見てきた。タイでは、米国人の男性たちがチェンマイの施設でトラを抱き、アマゾン川では、10代の若者たちがナマケモノの赤ちゃんと自撮り写真に納まっていた。

画像には映らない現実

 動物との触れ合いを楽しむ観光客の多くは、成熟したトラが人間に危害を加えないように、かぎ爪を抜かれたり、薬を投与されたりしていることを知らない。いつ行っても頬ずりできる小さなトラがいるのは、出産後すぐに母子を引き離して母トラの発情を促す「スピード繁殖」を行っているからだ。また、ゾウが人間を背中に乗せ、芸をするのは、幼い頃にブルフックで痛い目に遭わされ、野性の本能が“破壊”されたからだということ、そして、アマゾンの森林で密猟されるナマケモノの多くが、飼育下に置かれるとわずか数週間しか生き延びられないことも、観光客の多くは知らないのだ。

 観光客は、動物たちも触れ合いを楽しんでいると思い込んでいる。この思い込みのおかげで、こうした観光がビジネスとして成り立っているといっても過言ではない。

 要因はいくつかあるが、観光客は大概、自分が動物虐待に加担しているとはみじんも思っていない。さらにSNSも誤った認識を助長させる。動物を間近で楽しんでいる画像を見たら、旅先でそんな画像を撮ろうと思う投稿者が増えるのも無理はない。この問題については一部ではあるが、SNSにも責任があると認識されるようになってきた。

 インスタグラムは2017年12月に新機能を導入し、利用者が「ナマケモノ自撮り」「トラの赤ちゃん自撮り」といったハッシュタグ(キーワード)で検索しようとすると、動物に有害な投稿の可能性があるという警告が、画面に表示されるようになった。

※ナショナル ジオグラフィック6月号「観光と動物とSNS」は、観光施設にいる動物たちの知られざる過酷な飼育環境についてレポートします。

文=ナターシャ・デイリー/英語版編集部