毎年初夏のこの時期になると、米国では、俊足を誇る競走馬たちが「三冠」を目指して競い合う。三冠とは、100年あまりの歴史をもつ3つのレースを制することを指す。コースを走り抜ける優雅なサラブレッドを見ようと、競馬場には大きな帽子をかぶった陽気なファンたちが詰めかける。(参考記事:「ロイヤルアスコット、6月ベストフォト」)
だが、その人気とは裏腹に、競馬は競走馬にとっても騎手にとっても危険なスポーツだ。米国ジョッキークラブの公式データによると、米国では2018年だけで493頭の競走馬がレース中の事故が原因で死んでいる。
死因の大半は、四肢の損傷に関するものだ。その他の死因として、呼吸器不全、消化器不全、多臓器不全が続く。
カリフォルニア州にあるサンタアニタパーク競馬場では、ここ数カ月で23頭の馬が死んでいるが、そのほとんどが四肢の損傷による。カリフォルニア州競馬委員会で競走馬の診察を統括しているリック・アーサー氏は、その原因と考えられるものとして、競走馬をめぐる過酷な状況をあげる。
中でも、カリフォルニア州南部などの温暖な地域では、一年中競馬が行われるため、競走馬に必要な休養が与えられない状況だという。「アスリートにとって、一年じゅうベストなコンディションを保ち続けるのは難しいことです」
サンタアニタパーク競馬場で前例がないほどの競走馬が死んでいることによって、競馬の安全性にも再び目が向けられるようになっている。
たとえば2019年3月には、超党派の議員が連邦法案「2019年競馬公正法」を提出した。これは、競走馬のドーピング検査に全国一律の基準を設けようという法案だ。現在の米国の競馬産業は、州ごとに規制されている。(参考記事:「ウマの驚きの事実が続々発覚、大規模ゲノム研究で」)
サラブレッドの繁殖やレースの改善にあたっている米国ジョッキークラブもこの法案を支持しており、「競走馬の健康と安全を守るために、他国で行われているような最適な対策を講じるべき時です」という声明を出した。