クモの巣というものは、獲物がかかるのをじっと待つだけの受動的な罠だと考えている人が多いだろう。
ところが、それよりも進んだ巣を作るクモもいる。たとえば、世界各地で見られるオウギグモは、糸の張力を利用して狩りの道具にする。
5月13日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された論文によって、オウギグモの1種であるHyptiotes cavatusの巣が、恐ろしいほどのエネルギーを蓄え、放出していることが明らかになった。
彼らの巣は扇形で、支点にあたる部分から1本の糸が木に向かって伸びているように見えるが、その間には自分自身がいる。巣につながる糸と木にとめた糸は別々だ。そして、木にとめた糸をクモがたぐるようにすると、逆に巣につながるほうの糸が引っ張られて、巣全体がピンと張り詰めていく。
巣にエネルギーを溜め込んでいくその様子は、まるで弓を引き絞るようだ。ただしオウギグモの場合、体全体を使って適切なタイミングでそのエネルギーを解き放つ。
虫がクモの巣にぶつかると、オウギグモは木にとめていたほうの糸を解き放つ。すると、獲物に向けて巣とともに自らが発射される。このときに、粘着性のある糸にまず獲物がくっつく。続けて、木にとめたほうの糸によってクモの動きが突然止まり、その反動で今度は巣が逆方向に引っ張られるおかげで、虫が巣にくるまれて一丁上がりというわけだ。(参考記事:「0.00012秒の瞬時に閉じるクモのアゴの謎を解明」)
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