活断層の近くに住居を建てるのはなるべく避けたい。ただ、月に居住施設を建設するなら話は別だ。というのも、月は長い間、地質的に死んだ星で、活断層など心配しなくていいと考えられていたからだ。地球よりもかなり小さな月は、冷えるのも早いはずで、地殻変動に必要な熱は天体の内部に無いというのがその理由だ。 (参考記事:「月食中の月に隕石が衝突、観測はおそらく初」)
ところが、アポロ時代のデータを改めて分析した結果、月は死んだ星ではない可能性が見えてきた。これまで考えられていたよりも、地殻活動が活発であるらしいことを示唆する研究が2019年5月13日付けで科学誌「Nature Geoscience」に発表された。
月にも地震、つまり月震が起こることは、アポロ計画で月面に設置された月震計の記録でわかっていたが、比較的浅いところで起きる一部の地震については原因が不明だった。今回の論文によると、原因不明とされた月震は、断層崖と呼ばれる崖のような地形を震源地としているという。
「月のような岩石の天体が、誕生から46億年経った今も内部に熱を保ち活断層まであるとは、常識的に考えてあり得ないことです」。論文の共著者で米ワシントンDCにあるスミソニアン協会のトーマス・ワッターズ氏は言う。 (参考記事:「月全体の表面直下に水がある、驚きの研究、NASA」)
解明されていなかった28の地震
アポロ11号の月面着陸から、2019年の夏でちょうど50年になる。ソビエトとの宇宙競争時代、米国はとにかくソビエトよりも先に宇宙飛行士を月へ着陸させ、帰還させることに必死で、当時は月面で何をするかは二の次になっていた。(参考記事:「アマゾン創業者も参入、月面計画に各国が殺到」)