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夕暮れ時、コウモリの群れがディア洞窟を飛び立ち、狩りをしに周辺の多雨林へ散っていった。世界最大級のディア洞窟には、200万匹以上のコウモリが生息するとみられる。PHOTOGRAPH BY CARSTEN PETER

 ボルネオ島マレーシア領のグヌン・ムル国立公園の地下には、世界最大級の洞窟群が広がっている。神秘的な地下空間の全貌を探るため、洞窟探検隊に同行した。

 「ワクワクします。誰も足を踏み入れていない領域がこんなにたくさんある場所はほかにありません」と言って、アンディ・イービスは笑顔を輝かせた。「洞窟探検で、ボルネオ島は特別です。世界に類を見ない地下空間があります」

 70歳になるイービスは半世紀以上にわたり、世界でも奥地にある洞窟をいくつも訪れてきたベテランの探検家だ。1979年に英国の探検隊の一員として、ボルネオ島を訪れた際、イービスたちは洞窟の通路を約50キロにわたり探査するなど前例のない快挙を果たしている。この年の探検を機に、ボルネオ島の洞窟探査が本格的にはじまったのだ。

 私はイービスが率いる少人数のチームに同行し、「グッドラック洞窟」に向かった。この洞窟の奥には「サラワク・チャンバー」と呼ばれる、まるで別世界のような巨大な空洞がある。サラワク・チャンバーは、閉じた空間としては地球上で最大。幅435メートル、奥行き600メートル、高さ150メートルにも及ぶ巨大な空洞だ。

 1時間後、私たちはグッドラック洞窟の入り口に到着した。岩壁の割れ目から川が流れ出ている。私たちは川をたどって中へ入り、上流を目指した。水は透明で温かい。初めはふくらはぎが漬かる程度だったが、やがて水深は腰ほどになり、最後には胸まで水に入ることになった。

無数の光の正体

 ずぶぬれになりながら険しい道のりを1600メートルほど進むと、川が地中に消えた。サラワク・チャンバーの巨大な空間に入ったのだ。全員でライトを上に向け、一点に集中させた。大きなドーム状の天井は、ぼんやりとしか見えない。洞窟の奥も照らしてみたが、今度はまったく何も見えなかった。

 サラワク・チャンバーは蒸し暑く、まるで闇そのものが湿り気を帯びているように感じられた。周囲には、ライトを反射して宝石のようにきらめく無数の光が見えた。それはクモの目だった。なかには私の手のひらほどもある大きなクモもいた。

 私たちはサラワク・チャンバーの左側に別の入り口がないか探してみた。広大なため、場所によって様相がまったく違っており、軟らかな泥に覆われた岩場もあれば、おろし金のように鋭利な石灰岩の壁が複雑に入り組んだ場所もあった。また、鳥の羽根やグアノが分厚いじゅうたんのように降り積もり、不気味な静けさに包まれた一画もあった。そこはまるで、鳥やクモ、コオロギ、ムカデといった、洞窟にすむ生き物たちの墓場のようだった。

※ナショナル ジオグラフィック5月号「前人未到の洞窟を探る」では、ボルネオ島の洞窟群探査に同行したときの様子をレポートしています。

文=ニール・シェイ/ジャーナリスト