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夕暮れ時に木の葉を食べる雄のゾウ。15年に及ぶ内戦中、武器の調達資金にするために象牙が狙われ、公園内のゾウはほとんど殺されたが、1992年の停戦後は密猟が規制 され、数は回復した。PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES

 モザンビークのゴロンゴーザ国立公園は、1977年から92年の内戦で壊滅的な被害を受けた。公園本部はロケット砲で破壊され、サバンナは殺戮の舞台となった。ゾウやシマウマなどの大型動物も、食料のために、あるいは憂さ晴らしのために標的にされ、何千頭も殺された。

 繰り返される破壊と喪失に収束の兆しが見え始めたのは2004年。モザンビーク政府と米国のグレゴリー・C・カー財団が自然と人間の新たな共存を目指す「ゴロンゴーザ再生プロジェクト」を始動させたのだ。

 教育や医療が十分に行き届いていない地域では、少女たちに学ぶ機会を増やすため、50の「少女クラブ」を結成し、早婚を避けて勉強を続ける大切さを、学校の始業前や放課後に教えている。また地域の保健師の雇用や小規模農家の支援などを行っているのもプロジェクトの一環だ。

 動物の個体数も回復を見せている。内戦が終わった直後の1994年と比較すると、ゾウをはじめ、ライオン、アフリカスイギュウ、カバ、オグロヌーといった大型動物が大幅に増えているのだ。野生動物の保護に関して、これほどの規模で成功を収めている例は珍しい。

コーヒーに託した未来

 ゴロンゴーザ山は当初、国立公園に含まれていなかった。そのため、南アフリカの生態学者ケン・ティンリーは、この山のみならず、豊かな多様性を誇る公園の東側の高原や沿岸を含め、全体を一つの管理区域に統合することを1969年に提唱した。

 このティンリーの構想は、2010年になってようやく実現した。ブンドゥジ川の水源と深い森林があるゴロンゴーザ山の標高700メートル以上の土地が、公園に組み込まれたのだ。しかし、麓では住民が相変わらず木を伐採して焼き払い、農地にしていた。それ以外に生きるすべがないのが実情だった。

 公園の森林管理責任者であるモザンビーク人のペドロ・ムアグラが、会議で一つの提案をしたのはそんなときだ。木々が伐採された山腹でコーヒーを栽培したらどうだろう? コーヒーは木陰で育ちやすい。原生種の木を植えて木陰をつくれば、森林の再生にも収入にもつながる。周囲の反発に負けずにこの計画を進めたムアグラは今、公園長を務めている。

 公園ではこの事業に180人を雇い、コーヒー栽培を実地体験させていると、統括者のクエンティン・ハアルホフは言う。今度は自分たちで育ててもらうという流れだ。収穫したコーヒーは、国立公園付属の企業「プロドゥトス・ナトゥラス」が良い値で買い取ってくれることになっている。

 「私は科学者じゃありません」とハアルホフは言う。「でも、鳥やハチが戻ってきたことで、自然がほっとしているのがわかるんです」

※ナショナル ジオグラフィック5月号「よみがえる野生の鼓動」は、内戦で壊滅的被害を受けたモザンビークのゴロンゴーザ国立公園で進む再生プロジェクトをレポートします。

文=デビッド・クアメン/ジャーナリスト