パンクな髪形をした絶滅危惧種、ビサヤイノシシ(学名Sus cebifrons)が、復活の兆しを見せている。
オスの体毛がモヒカンのようになることで知られるこのイノシシは、現在、施設で300匹が飼育されており、野生での生息数は不明だ。かつてはフィリピンのビサヤ諸島にある6つの島に暮らしていたが、近絶滅種(critically endangered)となった今では、パナイ島とネグロス島のごく一部に残るだけとなっている。(参考記事:「モヒカンの蛾は、忘却の彼方へ」)
1970年代から80年代にかけて、ビサヤ諸島では、貴重な木材を目当てに森林がほぼ完全に伐採された。これによってネグロス島のイノシシの生息地は、元の広さの4%以下、パナイ島では8%以下まで激減した。
しかし現在、世界中の動物園や保護施設で、野生への再導入を視野に入れたビサヤイノシシの繁殖が順調に進んでいるという。
早ければ2019年中に、何匹かの個体がフィリピンの野生環境に戻されるかもしれないと、保護団体「タララク・ファンデーション」代表のフェルナンド・グティエレス氏は言う。同団体では、2カ所の繁殖センターでビサヤイノシシ60匹(亜種のSus cebifrons negrinusを含む)を保護している。
「ビサヤイノシシは20年前よりも増えています。人間が脅かすことがなければ、必ず数を回復するでしょう」と、グティエレス氏は述べている。
ビサヤイノシシは、この地域の重要な存在だ。食物連鎖に欠かせないのはもちろん、森を再生するのにも一役買っている。イノシシは地面を掘って食料を探す際に、土壌に空気を混ぜ込む役割を果たす。また、大きな果実を食べることで、その種を森のあちこちに拡散する。(参考記事:「世界初の希少イノシシ動画、もみあげが立派」)
イノシシを元々いた森に戻せるか
野生への再導入の準備として、グティエレス氏らは、パナイ島とネグロス島の3つの国立公園の調査を行っている。これらの公園では、伐採後に植えられた二次林が広がりつつある。
調査では、再導入に適したすみかを探し、補充が必要なほど生息数が少ないかどうかを見極めると同時に、家族で暮らしている個体がいるかどうかにも注意を払う。ビサヤイノシシは通常、メス数匹とたくさんの子供たちというグループで移動する。
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