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海中から回収された青いゴム手袋。捨てられてから月日があまりたっていないようで、大半の海洋プラスチックのような細かい破片にはなっていない。手袋の親指の下に写っているのはエボシダイの仔魚(しぎょ、幼生期の魚)で、人さし指の根元にいる細長い縞模様の魚はシイラだ。PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSCHWAGER
ハワイ州カイルア・コナにあるNOAA海洋漁業局に仮設した野外実験室で撮影。

 米国海洋大気庁(NOAA)に勤務する海洋学者のジャミソン・ゴーブと魚類生物学者のジョナサン・ホイットニーは潮目で見られる仔魚の研究を3年近く続けているが、最近の調査でハワイ沖の潮目には魚とその餌以外のものも存在しているのを見つけた。プラスチックの小片「マイクロプラスチック」だ。それも大量に含まれていて、仔魚がそれを食べてしまうという。

 生まれたばかりの魚は餌となる有機物が豊富な潮目に集まるが、餌と間違えてプラスチックを食べても栄養にはならず、次の餌にありつくまでに命を落とすおそれがある。

「潮目にいる仔魚は途方もない難関をかいくぐってきたのです」とゴーブは語る。「卵から仔魚になれる確率は0.1%。運に恵まれなければなれません。それなのに今、プラスチックという厄介ものが入り込んできました」

 ホイットニーとゴーブは、ハワイ沖の潮目からプラスチックが見つかることは予測していた。ハワイ諸島が「太平洋ごみベルト」と呼ばれる海洋ごみが集中する海域に位置しているからだ。しかし、二人はマイクロプラスチックの研究に手を出すつもりはなかった。自分たちの研究はあくまでも仔魚に関するものだと考えていたが、採取する海水に含まれるプラスチックの量があまりに多かったため、それを無視できなくなったのだ。

目に見えないからこそ恐ろしい

 プラスチックが及ぼす害については、科学的にまだ確認されていないが、ゴーブらの実験から、手がかりがいくつか見つかっている。たとえば、プラスチックを摂取した魚では、食欲低下や発育不全が見られるというのだ。こうした事態は、魚の繁殖に影響を及ぼし、最後には個体数の減少を招くおそれがある。

 トビウオはとりわけ高い頻度でプラスチックを食べていると思われる。この魚は、サメなど大型の魚の餌になるだけでなく、ハワイに生息する海鳥にとっても主要な食べ物だ。そうだとしたら、鳥はトビウオと一緒にプラスチックまで体内に取り込んでいるのか? そのために何らかの影響を受けているのか? 一つの疑問が解明されるたびに、新たに10の疑問が湧いてくる、とゴーブは言う。

 ゴーブとホイットニーが胃の中からプラスチックを見つけた仔魚のうち、最小のものは体長が6ミリほどしかなかった。つまり、魚たちが食べるプラスチック繊維はさらに小さいというわけだ。

「肉眼で見えるか見えないかの大きさです。1ミリもないですから」と、ホイットニーは話す。「それこそが恐ろしいのです。目に見えないような小さな欠片が問題を引き起こしているのですから」

※ナショナル ジオグラフィック5月号「小さなプラスチック、大きな問題」は、年間900万トンものプラスチックが海に流入している今、海中の生き物に及ぼす影響をハワイ沖で取材しました。

文=ローラ・パーカー/英語版編集部