月のリズムを体に宿す奇妙な海洋生物たち

上弦と下弦の月の違いを知るカキ、日時計と月時計をもつハマトビムシほか

2019.04.22
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【動画】世界最大規模の動物の大移動
地球で最大規模の動物の移動は、毎日行われているが、それを見ることはできない。夜、無数の小さなプランクトンが、餌を食べに海面に浮上するのだ。(字幕は英語です)

 月が動物、特に海に住む動物に及ぼす影響は大きい。

 月の満ち欠けに応じて、海の動物たちは興味深く、ときに奇妙な行動パターンをみせるが、最近の研究によって、さまざまな動物が月のリズムに同調する体内時計を持つことが明らかになってきた。

 こうした研究により、動物の知られざる側面が明らかになるほか、人間を含む動物が持つ体内時計の理解を深める手がかりも得られる。(参考記事:「睡眠科学でも超重要! 時計遺伝子の発見にノーベル賞」

 体内時計を最初に進化させたのは海の生きものだ。そのため、海洋生物の体内時計を研究することで、それがどのように進化したのか、どのような働きや相互作用があるのか、多くのことがわかる、と英スコットランド海洋科学協会の研究員キム・ラスト氏は説明する。以下に、月のリズムに関係ある海洋生物とその行動を紹介しよう。

動物プランクトン

 動物プランクトンは、世界最大規模の大移動を行う。毎夜、植物プランクトンを食べに海面へ向かうのだ。動物プランクトンは、太陽の光を頼って狩りをする多くの動物の餌でもある。そこで夜明けには、食べられるのを避けるために深く潜る。

写真のオキアミなどの動物プランクトンは、夜になると水面に上がり、日中は潜っている。しかし、その行動は、月の光の影響も受ける。(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT, MINDEN PICTURES/NAT GEO IMAGE COLLECTION)
[画像のクリックで拡大表示]

「捕食者は、光が届かなくなるところに動物プランクトンがたどりつくまで追いかけます」とラスト氏は話す。こうした日々の行動は、通常は太陽光によって調節される。しかし、冬に太陽が昇らない期間が数カ月も続く北極圏には、月のリズムに合わせた体内時計を持つ動物プランクトンがいる。つまり、体内時計は2つある。(参考記事:「海洋生物に2つの体内時計、人間も?」

 冬の北極圏に満月が昇ると、数日の間、地平線の上にとどまる。緯度によって期間は異なるが、その間、動物プランクトンは、捕食者から隠れるために深く潜る。しかし、月が昇ったり沈んだりする時期には、月の出入りの周期に合わせて、海面に浮上したり潜ったりする。この場合の月の周期は24時間50分だ。

次ページ:下弦の月に一斉に産卵するパロロ

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