宇宙生活で染色体に異変、双子で実験、最新研究

ISS滞在で人体に起きた変化を双子の兄弟と比べた、認知力にも変化

2019.04.16
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宇宙飛行士のスコット・ケリー氏(右)と、双子の兄弟で元宇宙飛行士のマーク・ケリー氏。スコット氏が国際宇宙ステーション(ISS)に1年滞在するミッションを前にしたメディアイベントで。(PHOTOGRAPH BY ROBERT MARKOWITZ, NASA)
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 宇宙で暮らしたら人体に何が起きるのかを知るのは、簡単ではない。その人物が地上にいたらどうなっていたかがわからないからだ。だが、双子の兄弟が地上で普通の暮らしを送っていたらどうだろう? そんな研究の成果が、4月12日付け学術誌「サイエンス」に掲載された。

 医学の分野では双子の研究が盛んに行われている。身体的にも遺伝的にもほぼ完全に一致しており、環境の変化に人がどう反応するか比較対照する理想的な条件が備わっている。(参考記事:「双子研究、安藤寿康氏 全5回:研究室に行ってみた」

 だから、米国の宇宙飛行士スコット・ケリー氏が、一卵性双生児の兄弟であるマーク氏と共に、宇宙飛行の影響を調べる実験の被験者になろうと提案すると、NASAは喜んでこれに応じた。

 こうして、他に類を見ない研究が計画された。スコット氏が国際宇宙ステーション(ISS)へ行き、1年間、微小重力の条件下で宇宙飛行士として働き、生活する。一方、地球ではマーク氏が、自由で典型的な民間人として働き、生活する。

【動画】宇宙で過ごす1年
宇宙旅行が人体に及ぼす影響を調べるため、宇宙飛行士のスコット・ケリー氏が1年間宇宙に滞在した。(解説は英語です)

 この実験は、2015年3月27日から2016年3月2日まで行われた。この1年間の前、期間中、そして後まで、多くの分野の科学者チームが、分子、生理学、行動の点から2人を継続的に調査。その成果をまとめた今回の論文は、月や火星、さらにはその先へと人類が向かう際に役立つ情報となるかもしれない。

 宇宙滞在で、本当にスコット・ケリー氏に長期的な変化が起こったのか? 私たち人間が地球を離れて長く生活すると、どのような運命が待っているのだろうか? わかったことを見てみよう。

宇宙での1年間で、スコット氏の体はどうなったのか?

 ISSにいる間、スコット氏の全般的な健康状態はずっと良好だった。だが、彼とマーク氏を比べた科学者たちは、いくつか小さな変化が起きていることに気づいた。

次ページ:染色体の末端部が長くなっていた

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