人類の系統樹に、新たな枝が加わった。4月10日、フィリピンの研究者が新種の原人を発見したと発表した。
「ホモ・ルゾネンシス(Homo luzonensis、ルソン原人)」と命名された未知の小型人類は、少なくとも6万7000年前から5万年前には、現在のフィリピンのルソン島で暮らしていた。全部で7本の歯と6本の小さな骨がルソン原人と同定された。
これらの骨では不思議なことに、数百万年前の猿人(アウストラロピテクス)と、もっと進化した人類に見られる特徴が混在していた。この画期的な発見は、4月10日付けの学術誌「ネイチャー」に発表された。東南アジアの島で古人類の証拠が見つかるのは、過去15年間で3件目だ。
「長い間、フィリピンの島々は、多かれ少なかれ蚊帳の外でした」と論文の共著者でプロジェクト・リーダーを務めたアルマンド・ミハレス氏は話す。同氏は、フィリピン大学ディリマン校の考古学者で、ナショナル ジオグラフィックの支援も受けている。しかし、今回のルソン原人の発見で状況は変わった。そして、人類が原始的な種から現生人類に近い種へと直線的に進化した、とするやや時代遅れの説も覆りつつある。(参考記事:「ヒトの進化はアフリカ限定だった!」)
「新発見に興奮しました」と、国立科学博物館の人類進化学者である海部陽介氏はメールで述べた。「この報告は、かつてアジアにいた原始的な人類の多様性が、従来の予想をはるかに超えるレベルのものであったことを物語っています」。なお、氏は今回の研究に関わっていない。(参考記事:「国立科学博物館 人類史研究グループ 海部陽介「研究室に行ってみた。」」)
論文を査読した英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの古人類学者アイーダ・ゴメス=ロブレス氏は、新種と断言するのをためらっている。しかし、今回の珍しい化石を説明する仮説は、どれも等しく興味深いと付け加えた。
「今後数年以内になされる発見の中で、間違いなく最も重要なものの1つです」
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