サンゴの一種ミドリイシ。雪のように見えるのは、満月の下、サンゴが放出した卵や精子。グレートバリアリーフで撮影。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 真夏のオーストラリア、満月から数日後の夜。グレートバリアリーフの海中には大量の雪が舞う。

 広大なサンゴ礁から、無数の卵と精子が放出されるのだ。これらが水面まで浮かび、受精卵となり、やがて幼生が生まれる。近くの海底に着生するものもあれば、流れに乗って遠くまで運ばれるものもある。(参考記事:「【動画】団結してクラゲを食べるサンゴを発見」

 サンゴはこのようにして一斉に産卵する。しかし、海水温の上昇によって、この集団繁殖が難しくなっている。それを示す新たな論文が、4月3日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された。

 グレートバリアリーフでは、2016年と2017年に発生した大規模なサンゴの白化現象の影響で、2018年の一斉産卵後に収集された幼生の数が、従来に比べて89%も減少したという。サンゴが完全に回復するのに5〜10年はかかると、研究者は推定している。(参考記事:「世界で大幅増、海でも熱波が生物を苦しめている」

サンゴ礁に差し込む午後の光。グレートバリアリーフのロードストーン・リーフで撮影。(PHOTOGRAPH BY MICHAELA SKOVRANOVA, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 大量白化現象が起こると、サンゴ礁はなかなか回復しないことを今回の論文は示している。また、サンゴの種類によって幼生の数の減り方が異なるため、気候変動によってサンゴ礁の構成が劇的に変わる可能性がある。(参考記事:「美しくも切ない、沖縄の白化現象の記録」

幼生収集パネルを1000枚

 大量の卵や精子を水中に放出して繁殖するサンゴは「放卵放精型」と呼ばれる。グレートバリアリーフに生息するサンゴの大半の種はこのタイプだ。一方、幼生になってから放出するタイプは「幼生保育型」と呼ばれ、放出された幼生は近くに着生する。

 どの種の成体サンゴが最も影響を受けたかを明らかにするため、研究チームは水中でサンゴの形状や分布を測定した。また、幼生を集めるためのパネルを、一斉産卵後の数日間、グレートバリアリーフのあちこちに設置した。

「1000枚ものパネルを設置しました」と論文の筆頭著者でオーストラリア、ジェームズクック大学のサンゴ礁研究者テリー・ヒューズ氏は話す。「北の端から南の端まで、2900キロにも及びました」

 以前の調査では、各パネルに50〜100個の幼生が付いていた。「しかし、今回の調査では、0個か1個しかついていないパネルが最も多かったのです」と同氏は言う。

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