「海氷の裏側」がホッキョクグマの命運を握る理由

海氷減少で危機に陥るのは狩りの場所が減るせいだけではない

2019.04.04
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カナダのヌナブト準州で、海氷の上を歩くホッキョクグマの母子。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 冬が来るたびに、北極海は凍り、海岸線にも氷が迫る。現在は、海氷の面積が最大になる時期をちょうど過ぎたところだ。北極海の春は遅い。これから春に向けて、海氷面積は縮小に転じる。ホッキョクグマにとっては、いまがとても重要な時期だ。彼らの食料が、海氷と切っても切れない関係にあるからだ。

 ここ数十年、海氷面積は急速に縮小している。米国の国立氷雪データセンターによれば、2019年に北極海を覆った海氷面積は、40年前に衛星データを収集し始めてから、7番目の小ささだった。(参考記事:「北極海の海氷面積、観測史上2番目の小ささに」

「今年は、最低記録の更新を避けることができました。しかし、問題は縮小する傾向であり、北極の海氷は年間を通して減少しています」と、カナダ、アルバータ大学でホッキョクグマを研究するアンドリュー・デロシェール氏は言う。「今、私たちは春が来るとどうなるのかをじっと見守っている状態です」(参考記事:「北極海の氷が消える、残された時間は」

 春の気温が低ければ、氷は消えずに残る。そうすれば、ホッキョクグマは容易に好物のアザラシにありつける。だが、春の気温が高ければ、獲物を狩る時間は限られてしまう。「この時期にどれだけ脂肪を蓄えられるかが、ホッキョクグマの生死を分けるのです」とデロシェール氏は話す。

 太ったクマほど、食料の乏しい夏を乗り切れる可能性が高い。何しろ、食料がまったくなくなることもあるのだから。また、太ったメスほど、健康な子どもを産み育てるためのエネルギーを持っている。デロシェール氏は、「氷が解けてできた水たまりをのぞき込んで、ちょっと太りすぎたかな、と思うホッキョクグマはいません」と冗談をはさむ。(参考記事:「ホッキョクグマ、温暖化を生き抜く4つの適応策」

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