発作の15分~45分前に察知するイヌも
「このような研究は重要です。イヌが発作に気付く能力が本当にあるのか、信頼できる科学的根拠になるからです」。米フロリダ国際大学教授で化学が専門のケネス・ファートン氏はこう話す。ファートン氏は今回の論文には関わっていないが、イヌの嗅覚による探知能力を研究している。
ファートン氏は、さらに先を目指した研究を行っている。自身の研究で、発作が起こる15分~45分前に察知できるイヌがかなりの数いることが分かったという。だとすれば、患者は薬を飲んで発作を防いだり、あるいは軽くしたりできるかもしれない。(参考記事:「医療大麻で救われる人々」)
ファートン氏らは、人が発作の前に特定の有機化合物を揮発させており、イヌがそれをかぎ分けられることを示すという研究を近く発表するという。
一方で、すでにさまざまな団体が「発作予知犬」や「発作対応犬」を提供している(前者は発作が起こる前に察知するイヌ、後者は発作が起こったときに助けるよう訓練されたイヌ)。しかし、その効果にはかなり幅がある。ファートン氏は、発作に効果的に対処したり、さらには発作を予知したりできるようイヌを訓練するための基準作りに取り組んでいる。今のところ、そのような基準は存在しない。(参考記事:「殺さずによけるクマ対策犬、劇的な効果、課題も」)
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部でてんかん研究を主導しているゲイリー・メイサラン氏は、「サイエンティフィック・リポーツ」の論文は小さな一歩で、イヌの訓練に今すぐ影響を与えることはないと強調する。犬の訓練は依然として難しく、費用がかかり、統一されたやり方もないと、メイサラン氏は付け加えた。だがプラスの面として、今回の結果は、新たな感知の仕組みや、てんかん研究の新しいアプローチにつながるかもしれない。
イヌとその驚異的な嗅覚はもっと研究されていいと、ファートン氏は話す。わずか数週間の訓練でも、発作に対処したり、兆候を知らせたりできるようになる例もあるという。もっとも、イヌと飼い主の関係が重要であり、関係づくりに時間がかかることもある。(参考記事:「カリスマ ドッグトレーナー、シーザー・ミランに聞いてみた」)
今回の研究は「納得できますし、驚きはしません」と、この分野で25年近く研究しているファートン氏は続けた。「訓練すれば、イヌはほとんどどんなことでも察知し、注意を促せるようになります」