イヌはその驚異的な嗅覚によって、人間の技術では不可能なことを数多くやってのける。例えば、薬物、爆発物、さらにはがんなどの病気までかぎ当てられる。訓練によって、てんかん発作に対処し、発作が起こる前に感じ取ることさえある。(参考記事:「鋭敏なのは嗅覚だけじゃない! 犬たちの超感覚」)
とはいえ、訓練の効果にはかなりばらつきがあり、発作の兆候がわかるという科学的な根拠もなかった。どういう仕組みでイヌにそれほどの芸当が可能なのかも解明されていない。行動、動作、あるいはにおいがわずかに変化するのだろうか?
議論が続くテーマだが、このたび訓練の手がかりになりそうな成果が発表された。3月28日付けの学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表された研究によれば、人はてんかん発作が起こっているときに特有のにおいを出しており、イヌはそれを認識できるという。これが論文で証明されたのははじめてだ。(参考記事:「「犬の性格は飼い主に似る」は本当だった」)
「これにより、今後の実験や訓練方法によって、イヌがてんかんの発作にうまく対処したり、発作が現れる前に気付けるようになる可能性が出てきました」と、論文の筆頭著者で、フランス、レンヌ大学の博士課程に在籍するアメリ・カタラ氏は話している。
著者たちは、タイプが異なるてんかん患者5人から、発作が起きているときや、休息、運動などさまざまな活動をしているときの汗を採取した。
次いで、汗のサンプルを缶に入れ、てんかん発作中のサンプルがどれに入っているか、5匹のイヌに探させた。その結果、訓練によってかぎ分けられることが分かった。
誤解のないよう記しておくと、研究で使われたサンプルは発作の前ではなく最中に取られたもので、この化学物質が何なのか、どの時点で出るのかは分かっていない。