現代のクラゲの遠い親戚にあたる動物が、長い歳月を経ているにもかかわらず、鐘状の体や触手まで保存されている。(PHOTOGRAPH BY AO SUN)

 3月22日付けの学術誌「サイエンス」に発表された論文によると、中国の川のほとりで5億1800万年前の古代生物の化石が大量に発見された。保存状態は驚異的に良好だという。

「清江」というこの化石産地からは、保存状態が非常に良く、ふつうは化石にならない軟体動物の化石まで見つかっている。こうした世界有数の化石を産出する地層は、地質学の世界で「ラーゲルシュテッテン」と呼ばれ、カナダの有名なバージェス頁岩(けつがん)や中国の澄江などが知られている。(参考記事:「バージェス頁岩層があるカナダのヨーホー国立公園」

「ほとんどの化石産地では殻のあるものや硬いものだけが化石になりますが、これらのラーゲルシュテッテンでは解剖学的な構造までが保存されます。最高の化石です」と、カンブリア紀の生物の専門家である米ハーバード大学の古生物学者ジョアンナ・ウルフ氏は説明する。なお、ウルフ氏は今回の研究には関与していない。(参考記事:「5億年前の驚異の化石、ゴカイ類の新種、神経は初」

 清江では現在までに、101種の動物化石が確認されており、その半数以上が新種だという。中国、西北大学の古生物学者で論文の筆頭著者である傅東静(フ・ドンジン)氏は「明るい未来が見えます」と言う。「清江は次のバージェス頁岩になるでしょう」

【ギャラリー】大発見! カンブリア紀の新たな化石群、中国 写真6点(画像クリックでギャラリーページへ)
清江の化石産地で見つかったクシクラゲ(有櫛動物)の化石。体表に並ぶ櫛板など、細部まで保存されていた。(PHOTOGRAPH BY AO SUN)

 今回の発見は、さまざまな動物が爆発的に現れたカンブリア紀初期に関する知識を大幅に増やしてくれる。この時代には、わずか数千万年の間に世界中で複雑な海洋生態系が誕生し、今日の主要な動物群の基礎となる生物が出現した。動物の生息地となる浅い海ができたことや、DNA調節機構の進化により体節をもつ生物が登場したことなど、多くの要因が重なって先例のない「種の放散」が起きたと考えられている。

「半数以上の化石が新種という化石産地が見つかったと聞いて驚いています。これまでの時点ですでに、カンブリア紀の生物多様性はかなりよく把握できていると思っていましたから。ワクワクしています!」と、スイス、ローザンヌ大学の古生物学者でカンブリア紀の生物を専門とするアリソン・デイリー氏は言う。(参考記事:「5億年前の奇妙な新種化石を発見、全身トゲだらけ」

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