フランスの動物園で、ガラス越しにホワイトタイガーを撮る女性。看板には、手を触れないよう書かれている。(PHOTOGRAPH BY JO-ANNE MCARTHUR)
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 動物園の柵の中には入るべきではない。当たり前のことだ。

 だが先日、米国アリゾナ州の動物園「ワイルドライフ・ワールド・ズー」で、ジャガーと一緒に自撮りしようとした女性がコンクリートの仕切りを乗り越えた。ジャガーは女性のセーターをつかみ、腕に爪を立てた。居合わせた人が彼女をジャガーから引き離したため、それ以上の傷を負うことはなかった。女性もジャガーも助かったが、彼女は自分の行動に過失があったと認めた。

 このニュースは大きな注目を集め、ネット上の誰もが同じ疑問を抱いた。いったいなぜ、人は、こんなにも愚かな行動に走るのだろう?

「それでも近づいてみたい」

 野生動物に近づこうと無茶な行動に出た人がニュースになったのは、これが初めてではない。インドの動物園では2018年、「間近で見たかった」という理由で、酔った男性がライオンの囲いに入った。中国では動物園の来園者が自撮り目的でいくつもの動物の囲いに入り、最後にはセイウチに殺された。同様の事故は自然の生息地でもたびたび起きている。イエローストーン国立公園では、何人もの観光客がバイソンに角で刺されている。写真を撮ろうとして近づきすぎるためだ。(参考記事:「【解説】サファリパークでトラに襲われ死傷、中国」

 攻撃してくるかもしれない野生動物に近づかないことは常識だ。だからこそ動物園には柵や、時には何重もの壁があり、人と動物の距離が保たれている。あちこちにある注意書きの指示は明快だ。「ケージに手を触れないでください」

 それでも、野生動物に近づいてみたいという衝動は、時に理性を無視するほど強くなる。

次ページ:動物がリアルなものでなくなっている

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