古代エジプトでは、苦難が続く時代を、女性の支配者を戴くことで乗り切った例がいくつもある。ハトシェプストからクレオパトラまで、ナイル川に面したこの国を、女性たちは見事に治めてみせた。初期の女性支配者の中には、侵略者を追い出し、より強い王朝を誕生させた者もいる。
ヒクソスがエジプトを奪取
紀元前18世紀末、古代エジプトへ異国からの侵入者がやってきた。この出来事について、それから1000年以上後のエジプトの歴史学者マネトが記している。侵入者はマネトが「ヘカ・カスト」(異国の支配者)と呼ぶ人々で、後にギリシャ語で「ヒクソス」と呼称されるようになった。ヒクソスは、現在のイスラエルがあるあたりの出身と考えられ、ヒクソスがエジプトに侵入してきたのは、第13王朝の時代のことだった。
古代エジプトは、侵入者による制圧を紀元前1650年頃まで防いだものの、その後、軍事力を蓄えたヒクソスが王都メンフィスを圧倒的な力で占領し、エジプト中王国は滅亡する。(参考記事:「アレクサンドロス大王の墓、21年がかりで探求」)
ヒクソスの手に落ちた北部(ナイル下流)から、南部へと逃れた人々はテーベ(現在のルクソール)を中心にして、王妃たちが率いる新しい王朝を誕生させようとしていた。
一方、ヒクソスは第15王朝を打ち立て、それから1世紀にわたってエジプト北部・中央部を支配した。同じ時期、南部では、一帯を支配していた人々を中心にして第16、17王朝が設立される。