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頭の上にこぶを並べたヨツコブツノゼミ。昆虫を死に至らしめる有毒な菌類に似せたものらしい。PHOTOGRAPH BY JAVIER AZNAR GONZALEZ DE RUEDA

 世界で最も奇怪な姿をした昆虫を選ぶコンテストがあるとしたら、ツノゼミは優勝候補にきっと名を連ねるだろう。なぜなら、ありえないほど変な見た目だからだ。

 写真のヨツコブツノゼミのように、驚くほど奇妙な突起物(これが名前の由来の角)を体から突き出したものも多いし、植物のとげや木の葉、昆虫の糞に体を似せて周囲にうまく紛れ込むものもいる。雨粒のような姿をしたツノゼミに限っても、名前がついているだけで40種以上いて、まだ分類されていないものは700種ほどもいるという。

 この小さな昆虫は、世界各地の樹木や植物の上で暮らし、分類済みで名前がついている約3200種の半分近くが北米から中南米にかけて広がる熱帯雨林に生息する。

 昆虫解剖学の専門家によると、ツノゼミの奇妙な姿形は、前胸背板が変形したものだという。ほかの昆虫の場合、この胸部の一部は小さな板状の盾のような形をしている。だが、創意工夫の才に富んだツノゼミは、前胸背板をグロテスクな形の角や球状に発達させ、自らの個性を際立たせるようになったのだ。

ツノゼミのコミュニケーション

 米ミズーリ大学でツノゼミを研究するレックス・コクロフトによれば、同じカメムシ目に属するセミが体の一部をこすり合わせて甲高い音を出してコミュニケーションするのに対し、ツノゼミは体を揺すり、植物を振動させて信号を送っているという。コクロフトは仲間の研究者とともに特殊な集音器でツノゼミが発する振動を録音し、呼びかけや警戒音といったさまざまな目的の音を解明した。なお、ツノゼミが出す音はどれも人間の耳には聞こえない。  

 こうしたコミュニケーション能力を使って、ツノゼミは子を天敵から守る。昆虫の場合、大半の種の雌が卵を置き去りにするが、多くのツノゼミの雌は産んだ卵から離れず、子が成虫になって飛び立つまで守り続けるという。万が一、クサギカメムシなどの天敵が近づくような事態になれば、一番近くにいる幼虫が体を揺すり、振動によって「警戒音」を立てる。この振動を感じ取った別の幼虫たちが自らも体を揺すって音を増幅する。異変に気づいた母親は羽を激しく動かしてうなりを立てたり、後肢を突き出したりして天敵を追い払う。

 驚くほど多様で奇妙なツノゼミへの興味は、まだまだ尽きることはない。

※ナショナル ジオグラフィック3月号「謎だらけのツノゼミ」は、熱帯雨林に生息する小さな怪物、ツノゼミの謎に包まれた生態に迫ります。

文=ダグラス・メイン英語版編集部