深海底にすむ生物の体内からもプラスチック、研究

深海生物の体内からの検出は初、専門家は食物連鎖への影響を懸念

2019.03.05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
深海に生息する小エビに似た小さな端脚類は、マイクロプラスチックやマイクロファイバーを食べていた。(PHOTOGRAPH BY DAVID SHALE, MINDEN PICTURES)
[画像のクリックで拡大表示]

 プラスチックゴミは、世界の海のあらゆる場所に入り込んでいる。このほど発表された論文により、人間の世界から最も遠く離れた海溝に生息する深海生物でさえ、驚くほどの量のプラスチックゴミを食べていることが初めて明らかになった。

 この論文は、学術誌「Royal Society Open Science」オンライン版に2019年2月27日付で発表されたもの。それによると、深海でプラゴミを食べているのは端脚類(海底で餌をあさる、小エビに似た小さな甲殻類)だった。英国の研究チームは、世界で最も深い6つの海溝で端脚類を捕獲し、研究室に持ち帰った。この生物の体内を調べたところ、80%以上の個体の消化管からプラスチックの繊維や粒子が見つかった。また、深い場所で捕獲された個体ほど、体内から見つかるプラスチック繊維の量が多かった。太平洋西部のマリアナ海溝の最深部は水深1万メートルを超えるが、ここで採集された端脚類のすべてにプラスチック繊維が見つかった。以前、海面付近で捕獲した海洋生物について同様の調査が行われたときには、体内からプラスチック粒子が見つかった生物の割合ははるかに低かった。(参考記事:「マリアナ海溝の深海生物、中国最悪の川超える汚染」

 今回の論文は、海底堆積物の中にプラスチック片を発見した2014年の研究に続くものだが、海洋に流出したプラスチックゴミは最終的に海溝に堆積するという事実を具体的に裏付けるもので、良い知らせとは言えない。

 深海に沈んだプラスチック粒子は、それ以上どこにも行くことはない。

 英ニューカッスル大学の海洋生物学者で論文の筆頭著者であるアラン・ジェーミソン氏は、「魔法の力で10年、20年、50年と時間を早送りして、プラスチックの製造もやめたら、川にあるプラスチックゴミはどうなるでしょうか? おそらく洗い流されて海に行くでしょう」と言う。「海岸線のプラスチックゴミの密度は下がり、目立たなくなるでしょう。外洋では紫外線と波の作用がプラスチックを劣化させるので、海面に浮かぶプラスチックゴミはなくなるでしょう。けれども深海では、プラスチックは散らばることも洗い流されることもなく、ひたすら蓄積されてゆくのです」(参考記事:「ハワイの海をすくったら、生き物とゴミがこんなに」

 ジェーミソン氏は続ける。「深海でプラスチックが見つかるのは今回だけではありません。太平洋は地球の半分を覆っています。私たちは日本と、日本からずっと離れたペルーとチリの沖でも調査しています。ですから、プラスチックはありとあらゆるところにあると断言できます。これ以上プラスチック探しに時間を浪費する必要はありません。研究者は海底のプラスチックが生物に及ぼす影響の研究に集中するべきです」(参考記事:「深海底に大量のマイクロプラスチックが集積、研究」

深海でのサンプル採集

 研究チームは、太平洋西部の5つの海溝と南米西海岸沖の1つの海溝で捕獲器をつかってサンプルを採集した。捕獲した生物の体内をプラスチックで汚染することがないように、捕獲器の罠には慎重に包んだ餌をつけた。

 彼らは、捕獲した端脚類の後腸と呼ばれる器官(消化管の後部)を調べた。その際にも、生物がプラスチックを実験器具から摂取して調査結果に影響を及ぼすことがないように、細心の注意を払った。

 生物の体内からは色とりどりのマイクロプラスチックが見つかった。

 体内から見つかったマイクロプラスチックの66%は青色の繊維だった。青やピンクのプラスチック片のほか、黒、赤、紫色のプラスチック片もあった。(参考記事:「太平洋ゴミベルト、46%が漁網、規模は最大16倍に」

 調査を行ったすべての海溝にプラスチック繊維があり、捕獲した端脚類の80%以上の体内からプラスチック繊維が見つかった。これらのプラスチック繊維を調べたところ、布地に使われているものと同じであることがわかった。つまり、洗濯機から出たプラスチック繊維が海に流れ出たのだと考えられる。

 2014年の研究で深海の海底にマイクロプラスチックがあるのを発見した英プリマス大学の海洋科学者リチャード・トンプソン氏は、今回の研究で「ジグソーパズルの欠けていたピースが見つかりました」と言う。

「次に考えるべきことは、これらのプラスチックは有害なのかということです。つまりリスクアセスメントです。海底のプラスチックゴミが増えれば、プラスチックと相互作用する生物も多くなります。深海についての研究は少なく、解明は始まったばかりです」

次ページ:食物連鎖との関係

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    記事が全て読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2018年6月号

海に流れ出るプラスチック/プラスチック4つの視点/タンチョウ/消えた入植者たちの影/サッカーボールを追って/極北の野生に迫る危機

地球か、それともプラスチックか? ナショジオはプラスチック問題に取り組むことを宣言します。鳥シリーズ「タンチョウ」ほか魅力的な特集を満載。特製ポスター付き!ワールドカップ目前「スタジアムの過去・現在・未来」

価格:本体1,170円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加