「生きた化石」カブトガニ なんとクモの仲間だった

膨大な遺伝子解析による研究結果、書き換えられるか進化のストーリー

2019.03.01
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「カブトガニ類の問題は、現生種が4種しかいないことです」と、鋏角亜門の進化を研究するスウェーデン、イェーテボリ大学のマティアス・オプスト氏は話す。「つまり、グループ内の多様性がとても低いということです。このような場合、系統樹の中での位置付けはなかなか変わらないものです」

実は同じクモ綱

 近年、これまでの説に異を唱えるような研究結果が、バイェステロス氏や他の研究者たちから出されている。遺伝子配列を解析した結果、クモ綱に「近い」系統としてカブトガニが存在するのではなく、カブトガニはクモ綱に「属する」と示唆されたのだ。

 今回の研究では、53種のクモ綱、カブトガニ、ウミグモ綱(その名にもかかわらず、実はクモではなく、鋏角亜門内の別系統)のほか、甲殻類、昆虫の遺伝子配列を解析し、その結果をうまく説明できる系統樹を複数作って検討、この結論に達した。(参考記事:「南極のウミグモにくっつく生物、どれだけ重荷?」

カブトガニは、世界中の海に生息しているが、米国東海岸の砂浜でもよく見られる。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
カブトガニは、世界中の海に生息しているが、米国東海岸の砂浜でもよく見られる。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 検討した系統樹の多く(およそ3分の2)では、カブトガニ類をクモ綱内のクツコムシ目に最も近縁なグループだと位置付けている。

 しかし、スペイン、バルセロナにあるゲノム制御センターでクモ綱の進化を研究するロサ・フェルナンデス氏は、まだ不確定要素が残っていると指摘する。例えば、残りの3分の1の系統樹では、カブトガニをクモ綱の外に分類している。

砂浜で大規模な「狂宴」を繰り広げて交尾するカブトガニ
2014年6月16日に撮影。カブトガニは、推定4億5000万年前から地球上に生息している。恐竜の登場より約2億年も早い。血液が青い数少ない生物の1種で、その血は製薬産業で医薬品の検査に利用されている。カブトガニは、年間を通して海で生活するが、年に1回、産卵のために砂浜の波打ち際を訪れる。米国で最大の産卵場所は、デラウェア湾沿いだ。(解説は英語です)

「今回の論文は、素晴らしい研究です」と同氏は話す。「しかし将来、別の方法で解析したときに異なる結果が出たとしても、私は驚かないでしょう」

陸からか、海からか?

 もし今回の結果が正しければ、クモ綱の進化の過程を説明するストーリーに修正を加える必要がある。つまり、他の種がすべて陸生なのに、カブトガニ類という小さな1系統だけが海生である理由を説明しなければならない。カブトガニ類は、陸生のクモ綱から枝分かれして海に戻ったのか? それとも、クモ綱の動物は複数回にわたって陸に進出したのだろうか?

「これまで私たち、少なくとも私自身は、カブトガニ類はすべての節足動物の祖先とされる三葉虫のような海生生物から進化したと考えていました」とオプスト氏は話す。節足動物とは、クモ綱などに加え、昆虫や甲殻類を含む生物群だ。「しかし今回の結果を踏まえると、カブトガニの祖先は陸に生息していて、かなり小型だったと考えられます」

 なかなか説明しづらい結果だと同氏は言う。しかし、最終的にどのような進化のストーリーに落ち着くのだとしても、カブトガニが奇妙であることに変わりはない。

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文=NADIA DRAKE/訳=牧野建志

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