よその子にも母乳を与え合う、サルで発見、なぜ?

中国のキンシコウ、アフリカやユーラシアの「旧世界ザル」で初確認

2019.02.27
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最新の研究によると、中国の秦嶺(シンレイ)山脈に暮らすキンシコウは、よそのメスの子にもおっぱいを与えるという。(Photograph by Cyril Ruoso, Minden Pictures)
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 母親であるということはそれだけで大変だが、よその子の面倒まで見るとなったらどうだろう。だが、キンシコウ(Rhinopithecus roxellana)にとっては、それが普通のことのようだ。学術誌「Science Advances」に2月20日付けで発表された研究結果によれば、5年に及んだ調査において、母親以外のメスからお乳をもらった赤ちゃんは、87%を超えていた。アロナーシング(allonursing、alloは「(母親と)異なる」の意)と呼ばれる現象だ。

 アロナーシングはげっ歯類や食肉類に多く見られ、霊長類の何種かにも見られるが、決して一般的ではない。アフリカやユーラシアに分布する「旧世界ザル」でアロナーシングの証拠が見つかったのは今回が初めてだ。(参考記事:「ライオン 生と死の平原」

哺乳類のわずか40種ほど

 アロナーシングが日常的に起こることが知られているのは、哺乳類のうち、ほんの40種ほどだ。2012年に中国中部の神農架(シェノンチャ)国家級自然保護区でキンシコウの集団を観察し始めた研究者たちは、こうした行動が見られることを予想だにしていなかった。(参考記事:「キンシコウ、かつては広く生息、古代文献で解明」

 あるメスが2匹の赤ちゃんに同時に授乳をするところを見るまでは、そんな考えが頭をよぎることすらなかったと、中南林業科技大学の野生生物保全学教授で、論文の筆頭著者であるズオフ・シャン氏は言う。

中国の研究者たちが、ある母親が同時に2匹の赤ちゃんに授乳をしているのを見たのは、調査開始から何年も経ってからのことだった。このとき初めて、キンシコウではアロナーシングが一般的であることに気づいたという。(Photograph by Zuofu Xiang)
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「新生児を追跡し始めたところ、生後3カ月まではアロナーシングが頻繁に起こることがわかり、驚きました」とシャン氏は話す。

 調査チームが観察した5度の繁殖期において、なんと87%以上の赤ちゃんが母親以外のメスからお乳をもらっていた。

 血縁は重要な要因のようで、赤ちゃんの祖母や叔母が授乳をする傾向があった。さらに、母親は他のメスが自分の子に授乳をしたことがあれば、そのメスの子に授乳をしてやることが多かったので、互恵性も要因となっているようだ。(参考記事:「吸血コウモリはなぜ仲間に血を分け与えるのか」

出産の次にハイコスト

 この発見が驚きである理由のひとつは、母乳というのは子への投資の中でも非常に大きいという点だ。自分の子以外にそんなお乳を与えることは、母親にとってどのようなメリットをもたらすのだろうか。

「哺乳類が行うことの中で最もエネルギーコストが大きいのが出産。次いで、母乳の分泌です。メスは多大なエネルギーを費やして、自分の体内で新しい物質を作り出すのです」と、スウェーデン、ルンド大学の行動・進化生態学者、キルスティ・マクレオド氏は言う。なお、同氏は今回の調査には関わっていない。(参考記事:「母乳で子育てするクモ、初めて発見、中国」

「アロナーシングは、血縁度が高い群れに暮らすメスでよく見られます。そうした集団では、メスが甥や姪と遺伝子を共有しているからです。あるいは、一度に何匹も子供を産むために、お乳を与える相手が多少増えても支障がないような動物でも見られます」と、マクレオド氏は話す。

「多くの霊長類は、いずれでもありません。集団で暮らす霊長類は多いのですが、ほとんどの種ではよその子に授乳をしませんので、キンシコウでのアロナーシングというのは重要かつ面白い報告です」

次ページ:生存率に大きな差が

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