世界の昆虫種の40%が減少、数十年で絶滅の可能性

チョウも甲虫も半分の種が減少中、73論文を包括レビュー

2019.02.18
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昆虫のなかでも特に大きな危険にさらされているフンコロガシは、栄養分のリサイクルと動物の排泄物や死骸の処理に重要な役割を果たしている。(PHOTOGRAPH BY KARINE AIGNER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
昆虫のなかでも特に大きな危険にさらされているフンコロガシは、栄養分のリサイクルと動物の排泄物や死骸の処理に重要な役割を果たしている。(PHOTOGRAPH BY KARINE AIGNER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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昆虫はなぜ減少した?

 これらの動物が困難な状況に陥った原因はいくつもあるが、決定的な1つがあるわけではないとワグナー氏は言う。「小さな問題がいくつも重なり、最終的に死をもたらしたのでしょう」

 昆虫が減少した原因の1つは、森林の伐採や農地開発など、人間によってもたらされた生息地の変化だ。おそらくこれが最大の原因だろう。ワグナー氏は、ヨーロッパと北米では、湿地や沼地の排水が進んだことと、小規模な家族経営農場の衰退によって昆虫が好む環境が減ったことが大きく影響しているとみる。

 農業が行われると、除草剤や殺虫剤などの化学物質が使われるようになる。殺虫剤は、当然、標的以外の昆虫にも悪影響を及ぼす。たとえば、殺虫剤のネオニコチノイドは、ミツバチの世界的な減少の原因になった。今回の研究で扱った生物種の減少のうち、8分の1は殺虫剤が関与している可能性がある。ワグナー氏は、気候変動の影響も大きいと言う。特に、干ばつなどの異常気象は、今後、強度を増し、期間が長くなり、頻度も増えると予想されている。そのほか、外来種、寄生虫、病原体などの影響もある。

【参考ギャラリー】ドクチョウの仲間たち(写真クリックでギャラリーページへ)
【参考ギャラリー】ドクチョウの仲間たち(写真クリックでギャラリーページへ)
チャイロドクチョウ(ドクチョウ族:チャイロドクチョウ属)太陽が照りつける中、道端に備え付けられているコスタリカの水道局の水道の蛇口の水を飲みにやって来た。テキサス州南部から中央アメリカ全体にかけて分布。

昆虫が減少したら、何が起きる?

 サンチェス=バヨ氏は、「鳥類や小型哺乳類から魚類まで、多くの動物が昆虫を食べます。つまり昆虫が減少すれば、ほかのすべての動物が減少します」と言う。

 米コーネル大学の昆虫学者ジョン・ロージー氏は、昆虫は、植物への授粉など、人間にとって計り知れないほど大きな役割を果たしていると言う。顕花植物の約4分の3と、世界の食料供給の3分の1以上を生み出す作物が、昆虫による授粉に頼っている。(参考記事:「授粉にまつわる植物と動物の驚異の生態」

 ケニアのムパラ研究センターの昆虫学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるディノ・マーティンズ氏は、「昆虫がいなくなれば食料もなくなり、人間も暮らせなくなります」と言う。

 昆虫のもう1つの役割は、動植物の死骸や排泄物の処理と栄養分のリサイクルだ。 米ルイジアナ州立大学の昆虫学者ティモシー・ショーウォーター氏は、動植物の死骸や排泄物を分解するフンコロガシなどがいなくなったら「不快な状態になるでしょうね」と言う。(参考記事:「延長戦で決着 糞をめぐるフンコロガシのバトル」

写真のカラフトセセリのようなチョウは、作物やその他の顕花植物に授粉する重要な存在だ。(PHOTOGRAPH BY KARIN ROTHMAN, MINDEN PICTURES/NAT GEO IMAGE COLLECTION)
写真のカラフトセセリのようなチョウは、作物やその他の顕花植物に授粉する重要な存在だ。(PHOTOGRAPH BY KARIN ROTHMAN, MINDEN PICTURES/NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 昆虫が置かれている状況はどのくらい切迫しているのだろうか? 心配ではあるが、「まだその問題に答えられるだけの情報が集まっていません」とワグナー氏は言う。主な理由は長期的な研究がないことだが、昆虫の個体数を研究するのは非常に難しい。昆虫の多くは個体数が急激に増えたり減ったりするからだ。彼らは条件が良いときには大発生するが、気象の揺らぎにも敏感に反応する。

 ワグナー氏によると、近年の研究のおかげで昆虫の長期的な研究に関心を持つ人が増え、研究資金も増えているという。昆虫への注目が高まれば、ロッキートビバッタの絶滅のような悲劇を回避できるかもしれない。

「個体数が非常に多いように見える昆虫でさえ、短期間で絶滅することがあります」とショーウォーター氏は言う。「誰かが昆虫に目を向け、関心を持たないと、絶滅を阻止することはできません」

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文=Douglas Main/訳=三枝小夜子

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