「世界一孤独なカエル」ロミオが、写真版ノアの箱舟「PHOTO ARK(フォト・アーク)」の一員になった。
PHOTO ARKは、ナショナル ジオグラフィックと写真家ジョエル・サートレイ氏が立ち上げた撮影プロジェクト。世界の動物園や動物保護施設で飼育されている約1万3000種すべてを絶滅前に記録する取り組みで、すでに9000種以上の撮影を終えている。(参考記事:「PHOTO ARK(フォト・アーク)プロジェクトとは?」)
サートレイ氏は1月19日、ボリビアのアルシド・ドルビニ自然史博物館で、オレンジのおなかを持つロミオを撮影した。10年前に野生で捕獲されたロミオは最近まで、セイウェンカズミズガエル(学名Telmatobius yuracare)最後の個体と考えられていた。(参考記事:「「動物の箱舟」9000番目はスリランカの希少魚」)
今回登録されたのはロミオだけではない。最近野生で発見された同種のジュリエットも一緒に撮影された。繁殖相手候補となるジュリエットが発見されたことで、絶滅の危機にひんするセイウェンカズミズガエルに一筋の光が差し込んでいる。
セイウェンカズミズガエルは、ボリビア・アンデスの雲霧林地帯であるユンガスの小川のみに生息し、生態系の消失、汚染、気温変動などが原因で個体数が激減している。
サートレイ氏はメール取材に応じ、ロミオはとても貴重な存在のため、「冷房完備のトレーラーで撮影しなければなりませんでした。このトレーラーはクリーンルーム化され、水槽がずらりと並べられていました」と説明した。「つまり、彼をただ見るだけでも、殺菌された専用のつなぎと長靴に着替えなければならないということです」
「彼の個性が光る写真を撮影するにはコツがあります」(参考記事:「写真は動物たちを絶滅から救えるか」)
地球の多様性、健全性を維持してくれている動物たちが急速に自然界から姿を消している。ナショナル ジオグラフィックと写真家ジョエル・サートレイ氏は共同で「PHOTO ARK」を立ち上げ、世界中で飼育されているすべての種を写真に記録しようとしている。すでに絶滅危惧種を含む9000種以上の撮影を終えており、人々が動物の危機に関心を持ち、行動を起こすきっかけとなっている(解説は英語です)。
例えば、写真を見る人がロミオやジュリエットと目が合っているように感じられるよう、サートレイ氏はカメラを微調整し、さまざまな角度や位置を試した。写真を見れば、ロミオとジュリエットに親近感がわき、セイウェンカズミズガエルの苦境をより深く理解してもらえるはずだと、サートレイ氏は述べている。
「1匹のカエルの運命に思いをはせることができれば、自然界のすべてのものに関心を持つことができるでしょう」
ジュリエットを探し求めて
ロミオが最初に注目されたのは2018年。NPO「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(GWC)」がマッチングサイト「Match.com」と手を組み、金色の目を持つ孤独な雄ガエルの相手を探したことがきっかけだ。
努力は実を結んだ。2019年1月、アルシド・ドルビニ自然史博物館の爬虫両生類学主任テレサ・カマーチョ・バダニ氏らが5匹のセイウェンカズミズガエルを発見したのだ。ジュリエットのほか、若い雌と3匹の雄が見つかった。
「これほど情熱を持ってカエルを探したのは初めてです」。バダニ氏は雨や湿気、足元の起伏に何日も耐え、調査旅行の最終日、小川で5匹のカエルを発見した。
ロミオが水槽の中で孤独に年を重ねていることを知っていたため、仲間を見つけなければならないという強烈なプレッシャーもあったと、バダニ氏は明かしている。
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