修復終えたツタンカーメンの墓 見えた新課題

砂ぼこりなど、王墓保存の難題を解決した修復チームが次に心配することは?

2019.02.01
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2016年、ツタンカーメンの玄室の修復のため調査する科学者チーム。(PHOTOGRAPH COURTESY J. PAUL GETTY TRUST)

 ツタンカーメンの墓が発掘されたのは1922年。以後、この少年王のミイラや黄金の副葬品を納め、鮮やかな壁画に彩られた3300年前の玄室は、人々の想像力を刺激し、魅了してきた。発掘から100年近くたち、10年がかりで慎重に進められた科学者や修復家からなる保存プロジェクトがこのほど完了した。誰もが知る古代の王墓について、これまで多くの謎が解き明かされてきたが、王墓の保存に関しては新たな課題が浮かび上がっている。

 今回の修復は、エジプト考古学博物館と米国のゲティ保存研究所が共同で進めてきたもので、2019年1月下旬にルクソールで開催されたシンポジウムでその成果が発表された。棺を収める玄室の広さは約110平方メートルで、一度に12人前後で修復作業にあたった。

 修復は2009年に始まり当初は2014年に完了する予定だったが、2011年のエジプト革命と2013年のクーデターで、予定よりも遅れての完了となった。 (参考記事:「当局発表:ツタンカーメンの隠し部屋はなかった」

 ゲティ保存研究所の主席科学者で、修復家としてプロジェクトに携わったネヴィル・アグニュー氏は、「王家の谷を訪れる人は、ツタンカーメンの墓に行きたがります」と言う。未来に向けた保存計画を立てるために、王墓の状態を徹底的に記録・分析して、今後の経過を予想する必要がある。

「何もしなかったら、王墓は将来どうなってしまうでしょう? 私たちは、過去、現在、未来にわたる抗菌スペクトル(抗菌薬が作用する範囲)に興味をもちました。包括的に対処できる方法がないかを探ったのです」とアグニュー氏。

茶色い斑点の謎が解明

 実際に、壁画についたしみの成分を調べてみると、リンゴ酸の濃度が高いことが分かった。リンゴ酸は、ある種の菌類や細菌の代謝副産物だ。つまり、しみは微生物に由来するものと考えられた。ところが玄室の壁から拭いとった物質をDNA分析してみると、バシラス属やコクリア属などの微生物が認められたものの、壁画のしみを作った生物の痕跡は、電子顕微鏡画像でも見つからなかった。

【参考動画】古代エジプト101
数千年にわたって栄えた古代エジプト文明はピラミッドやファラオやミイラや墳墓で知られるが、後世にどのような影響を及ぼしたのだろうか?

次ページ:ツタンカーメンの新たな呪い?

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