激変した「イギリス人」の顔を一挙復元、4万年分

脱EUと移民問題で揺れる英国、大陸とのつながり色濃く、英博物館

2019.01.30
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 英国は現在、欧州連合離脱交渉の最終段階に入ろうとしている。この展示をきっかけに、ブライトンの先住民やユーラシア大陸との文化的つながりについて対話が生まれることを、ル・ソー氏は期待している。

「私たちがどれだけ大陸と強く結びついてきたか、各時代における民族の大移動がどれだけ私たちの歴史に影響を与えてきたかを伝えられればと思っています」。ル・ソー氏はまた、ブリテン島がユーラシア大陸と過去数度にわたって陸続きだったことがあり、わずか8000年前にもつながっていたと付け加えた。(参考記事:「海に沈んだドッガーランド」

個性的だった人々

 今回の展示の興味深い点は、科学によって彼らの人生が明らかにされたことだと、ニルソン氏は言う。「これまで数多くの頭骨を扱ってきましたが、今回の7人は最も個性的でした。完成した顔から、それぞれの人生が見えたのです」

 特にホワイトホークウーマンには、尋常ならざる事情があったことは明らかだ。女性は5000年以上前に、現在のイングランドとウェールズとの境あたりで生まれ、その後ある時点でサセックスへ向かって東へ数百キロ移動し、新石器時代の墓地に幸運のお守りとともに埋葬された。

 骨盤のあたりに胎児の骨があったことから、女性は出産時に死んだと思われる。顔を復元するという芸術的作業に取り組む際、ニルソン氏はこの科学的洞察を生かすようにした。

「少しばかり好奇心を抱いていて、未来のことを考えているような表情にしようと思いました。出産が原因で亡くなったと思われますが、その直前の彼女の姿を想像して顔を復元しました」

ギャラリー:4万年で「イギリス人」の顔はこんなに変わっていた 写真7点(写真クリックでギャラリーページへ)
2300年前の「スロンクヒルマン」(左)と1500年前の「スタッフォードロードマン」(右)。(COURTESY ROYAL PAVILION & MUSEUMS, BRIGHTON & HOVE)

 したり顔の2300年前の「スロンクヒルマン」も、別の理由で苦労したとニルソン氏は語る。骨の構造から、鉄器時代の20代男性で、「おそらくハンサムな部類に入っていた」と想像できるが、この手の顔はマネキンのようになりがちだという。また、目の上の額が大きく張り出していて、「残酷そうな」顔つきに見えただろうともいう。「笑みを浮かべさせようとすると、どうしても不気味になってしまいます」

 最も新しい1500年前の「スタッフォードロードマン」の顔も、どうすべきか迷った点があるという。彼はアングロ・サクソン時代の男性で、顔にできたひどい腫れものが原因で死んだとされている。死亡時に腫れものはだいぶ醜く膨れ上がっていたはずだが、ニルソン氏はその部分をあえて目立たせないことにしたという。

「ある程度の尊厳を持たせ、博物館の来館者に、彼とのつながりを感じてもらいたかったのです」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:4万年で「イギリス人」の顔はこんなに変わった 写真あと4点

文=Kristin Romey/訳=ルーバー荒井ハンナ

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