絶景ウユニ塩原に眠る「お宝」はボリビアを救うか

莫大な利益を生むリチウムが21世紀の「ゴールドラッシュ」を巻き起こす

2019.01.29
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ボリビアの先住民アイマラの人々が、ウユニ塩原の表面を覆う塩を採取する。だが、その地下には塩よりも莫大な利益をもたらすリチウムが眠っている。PHOTOGRAPH BY CÉDRIC GERBEHAYE

 今後数年でリチウムは、かつての金鉱や20世紀の石油をしのぐ経済ブームを巻き起こす可能性がある。双極性障害の治療薬から核兵器まで、さまざまな製品に使われてきたリチウムだが、今ではコンピューターや携帯電話などの電子機器の電池に不可欠な材料となっている。
 
 2017年の世界のリチウムの消費量は約4万トン。15年以降、年にざっと10%のペースで増えている。需要の急速な伸びを反映して、同時期に価格は3倍に跳ね上がった。

 この傾向に拍車をかけるのは、電気自動車の普及だ。米企業テスラには、重さ約63キロものリチウム化合物を用いたバッテリーを搭載する車種もある。米金融大手ゴールドマン・サックスによれば、これは携帯電話1万台に匹敵する量で、自動車販売台数の1%が電気自動車に置き換わるたびに、リチウムの需要は年間7万トン増える予測だという。リチウムが豊富にある国は、もう貧困を恐れる必要などなさそうだ。

 リチウムは世界各地で採掘されているが、現在わかっている世界の埋蔵量の最大75%が、中央アンデスに延びる高原、アルティプラノ=プーナに眠っている。チリ、アルゼンチン、ボリビアにまたがる、塩が堆積したこの高原は「リチウム三角地帯」と呼ばれる。チリは1980年代からアタカマ塩原のかん水をくみ上げ、そこからリチウムを抽出してきた。今やこの塩原は南米きっての産地だ。

予測不可能なウユニ塩原の変化

 ボリビアのリチウム埋蔵量も、生産性の高いアタカマ塩原にひけをとらない。リチウムがボリビアの経済を救うには、リチウムが眠る場所、つまりウユニ塩原(ウユニ塩湖とも呼ばれる)を開発しなければならない。広さ1万平方キロ余りの盆地に塩が堆積してできたウユニ塩原は、ボリビアが誇る景勝地の一つだ。もし、地下に眠る資源を採掘すれば、その壮大な景観は、ほぼ確実に姿を変えるだろう。

 ボリビアにとって最大の難関は技術的な課題だ。かん水から電池の生産に使える高純度のリチウムを得るには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムを分離する必要があり、特に塩化マグネシウムの除去にはコストがかかる。ウユニ塩原は雨が多く、かん水の蒸発に時間がかかる上、マグネシウムの含有量が多い。

 開発でウユニ塩原がどう変わるかは、ほぼ予測不可能だ。最大の懸念の一つは、リチウム生産のためにくみ上げられる水の量だ。また、塩原の表面がどうなるかも気がかりだ。

 だが、確かなことが三つある。まずは、この世界最大の塩原の地下に、世界の埋蔵量の推定17%を占めるリチウム資源が眠っていること。次に、貧困層が人口の40%を占めるこの国の政府は、リチウム開発に経済的な苦境からの脱出を託していること。最後は、そのためには手つかずの自然が残るウユニ塩原を開発しなければならないが、計画がうまくいく保証はなく、国民の多くは大した期待を抱いていないことだ。

※ナショナル ジオグラフィック2月号「ウユニ塩原のリチウム開発」では開発現場の南米ボリビアで高まる懸念をレポートしています。

文=ロバート・ドレイパー/ジャーナリスト

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