肉を半分に減らさないと地球に「破滅的被害」

2050年、100億人時代に向けて英医学雑誌が大胆な食の改革を提言

2019.01.25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

畜産と温室効果ガスをめぐる論争

 野菜中心の食生活が食の安定化への万能薬であるという考えは、全ての専門家の共通認識ではない。米カリフォルニア大学デービス校の動物科学者フランク・ミトローナー氏は以前から、温室効果ガスの排出原因として、肉食が不当にやり玉に挙げられていると主張してきた。

米テキサス州の肉屋で、枝肉を半分に切ったものをさらに小さな部位に切り分けていく。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

「畜産が温室効果ガスの一因であるのは確かですが、私が最も心配するのは、それがあたかも原因の大部分であるという印象を、この論文が与えかねないことです。実際は、最大の炭素排出源は化石燃料の使用です」

 米環境保護庁によると、産業、電力、交通における化石燃料の燃焼が、温室効果ガス排出量の大部分を占めている。農業による排出量は全体の9%で、畜産はさらにそのうちのわずか4%である。

 ミトローナー氏はさらに、家畜による温室効果ガスの量を計算する際にも、論文はメタンの量に重きをおきすぎていると指摘する。炭素と比べると、メタンが大気中に留まる時間は短い。その時間がどれくらいかという点では専門家の間で意見が異なるが、メタンは海水の温暖化に大きく影響しているという研究もある。(参考記事:「3NOPが牛のげっぷ中のメタンを3割減らす」

食品の無駄を減らせ

 論文の食生活に関するガイドラインには批判もあるが、食品の無駄を減らすべきだという提案は広く受け入れられている。米国だけでも、30%近くの食品が無駄に捨てられている。(参考記事:「コメの生産量と同量の食品が日本で廃棄されている」

 論文は、廃棄量を減らすために消費者と生産者の双方ができることを提案している。生産者側では、保存技術の向上と汚染の発見を容易にする技術が、消費者には啓蒙活動が効果的だ。(参考記事:「年間500万トンを超える食品ロスを減らすには」

 食習慣を変え、食べ物の無駄を減らすことに、腰が引ける人は多いだろう。だが、『101 Ways to Go Zero Waste(無駄をなくす101の方法:未邦訳)』の著者キャスリン・ケロッグ氏は、毎月250ドル(約2万7500円)もあれば生活できるという。

「工夫すれば、食べ物を無駄なく使い切る方法はたくさんあります。人々は、その方法をただ知らないだけだと思います」。たとえば、野菜の各部位の調理法を学び、冷蔵庫に何があるか常に頭に入れておくとよい、とケロッグ氏はアドバイスする。

 とはいえ、米カリフォルニア州在住のケロッグ氏は、自宅のすぐ近くに農家の直売所があるという恵まれた環境にある。食料品店や市場が近くにない、いわゆる「食の砂漠」に住む人々にとっては、新鮮な果物や野菜を手に入れることは難しい。(参考記事:「日本に広がる新たな飢餓」

「私たちが提案する行動は全て、今実行できるものばかりです」とファンゾ氏は言う。「実現困難な未来の技術ではありません。ただ、大規模に実施されていないというだけです」

 論文の発表したランセット委員会は、1月17日を皮切りに、世界30カ国以上で関連イベントを開催している。また、国連などの国際機関へ、新たなガイドラインの実施を呼び掛けていく。

ギャラリー:オランダが救う世界の飢餓(写真クリックでギャラリーページへ)
15万羽を飼育するハイテク養鶏場。ふ化から解体まで一貫した管理体制が整っている。需要拡大に対応し、ニワトリになるべく負担をかけず、生産量を最大限に高める技術の開発に努めている。 (PHOTOGRAPH BY LUCA LOCATELLI)

文=Sarah Gibbens/訳=ルーバー荒井ハンナ

おすすめ関連書籍

食材の科学

菜食とスーパーフードの魅力再発見

「ナショナル ジオグラフィック別冊」シリーズの第2弾。米国でブームの野菜や果物中心のヘルシーな食生活をカラフルな写真とともに紹介するムックです。

定価:本体1,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加