延長戦で決着 糞をめぐるフンコロガシのバトル

持ち帰る権利をかけた2匹の死闘を撮影 この甲虫には、糞こそ「貴重な資源」 

2019.01.22
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【動画】「臭い賞品」を勝ち取るのはどちら? (解説は英語です)

 糞をめぐって争う2匹――三角関係を指した比喩ではない。

 コガネムシ科の糞虫(ふんちゅう:動物の糞を餌とするコガネムシ科の昆虫の総称)にとっては、生き残りを賭けた戦いなのだ。糞は食糧であるばかりか、幼虫を育てる小部屋にもなる。つまり、貴重な資源だ。映像の2匹は、最高の獲物を転がして運び去ろうと必死で、どちらも驚くほどしつこい。 (参考記事:「【動画】タコとハリセンボンの死闘、勝つのは?」

 撮影されたのは、南アフリカのジュマ動物保護区。英国のロンドン自然史博物館で甲虫の管理責任者であるマックス・バークレー氏によると、2匹はタマオシコガネの一種Kheper nigroaeneusのようだ。

 Kheper nigroaeneusは、南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエおよびモザンビークの最南端部に生息する。

 この甲虫にとって、糞の価値は大変大きく、「道に落ちていた大金の入った袋のようなものだ」とバークレー氏は説明してくれた。「誰だって、たくさんのお金を安全なところに保管して、まだ残っているなら戻って来てもっと手に入れようとしますよね」と、同氏はメールでの取材に答えている。 (参考記事:「なぜ動物はうんちを食べるのか」

甲虫の戦法

 バークレー氏によると、糞を奪い合う争いで重要なのは、相手を投げてバランスを崩させることだという。

「実は硬い翅(はね)をもつ甲虫も、空中から地面に降りた瞬間が一番無防備と言えます。飛ぶ際に利用する大きな薄い翅は傷つきやすく、危険にさらされているからです。この翅が傷ついてしまうと、回復には時間がかかります」。実は、映像で糞を奪おうとしている方は、ほかから飛んできた糞虫だ。まずは安全な距離を保って地面に降り、翅を完全に閉じてから攻撃を仕掛けます、とバークレー氏は指摘する。(参考記事:「2017年7月号 生命を包む美しく硬い翅」

 つまり、飛んで襲いかかるほうが分が悪いのだ。

 米モンタナ州ミズーラにあるモンタナ大学の生物学者で、『動物たちの武器 闘いは進化する』(エクスナレッジ刊)の著者ダグ・エムレン氏によれば、チョウやスズメバチのように空中戦をする昆虫もいるが、体が大きい甲虫は敏捷さとはほど遠いこともあり、争うときは地上戦になるという。

次ページ:体が大きいほうが有利とは限らない?

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