地球への天体衝突が2.9億年前に急増、今も継続か

過去10億年の衝突ペース変化を初めて解明、「信じられないような結果」

2019.01.21
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

地球でも衝突が急増したのか?

 科学者たちは地球でも同じように天体衝突ペースが変化したはずと考えたが、侵食作用のある地球上でその証拠を見つけるのは難しそうだった。しかし、論文の共同執筆者である英サウサンプトン大学地球科学科のトーマス・ガーノン准教授が、キンバーライトという岩石を利用してクレーターの侵食を推測できることに気づいた。

 キンバーライトは地下のマグマが冷え固まってできる火成岩で、非常に古く安定した大陸の地中で「キンバーライトパイプ」と呼ばれるパイプ状の岩脈を形成する。キンバーライトパイプは地中深くから浅い地殻までダイヤモンドを運んでくることで知られ、最近では詳細な地図が作られ、ダイヤモンドの採掘に役立てられている。(参考記事:「ダイヤモンド入りマグマ、ガスで上昇?」

「大陸は、数千本のキンバーライトパイプが刺さった針山のようなものなのです。キンバーライトパイプが受けた侵食を調べれば、古い時代のクレーターが受けた侵食作用を知ることができます」とガーノン氏は言う。今から6億5000万年前には、地球全体が凍結する「スノーボールアース」と呼ばれる現象が起こり、キンバーライトパイプを含む地殻の3分の1が削り取られた。そのため、これより前の時代の衝突記録はほとんど残っていない。(参考記事:「消えた12億年分の地層、原因はスノーボールアース」

【参考ギャラリー】まるで芸術、自然の神秘がつくった世界の奇岩怪石 写真16点(画像クリックでギャラリーページへ)
【参考ギャラリー】まるで芸術、自然の神秘がつくった世界の奇岩怪石 写真16点(画像クリックでギャラリーページへ)
米イエローストーン国立公園のオールド・フェイスフル間欠泉の「卵」は多層構造をしていて、過去の熱水だまりのそのときの状態を知る手がかりになる。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 それ以降では、侵食はほとんど起こっていなかった。つまり、クレーターの記録に偏りはない。それなら、2億9000万年前に月で起きた衝突の増加が地球でも同様に起こったことを示しているはずだ。

 ボトキ氏は、「最も単純なモデルでは、隕石の衝突ペースは2億9000万年前に増加し、まだ高い状態が続いているという結果になりました」と言う。「私たちは、この結論に自信を持っています」

 米ノースカロライナ州立大学惑星地質学科のポール・バーン助教は、地球と月の記録が一致していることから、「今回の発見が本物である可能性は高いと考えられます」と言う。なお、バーン氏は今回の研究には関与していない。

 月と同じように大気がなく、侵食が起こらない水星の観測データも役に立つかもしれない。欧州宇宙機関(ESA)の水星探査機「ベピコロンボ(BepiColombo)」が2025年に水星に到着すれば、LROのディバイナーと同様の観測装置を使ってクレーターの地図を作成し、形成年代を調べることができるからだ。

「水星でも同じような兆候が見つかるかもしれません」とマズルーイー氏は言う。「もしそうなれば、本当にすごいことです」

小惑星帯の変動

 問題は、なぜ隕石衝突が増えたのかということだ。ボトキ氏によると、地球に衝突する天体のほとんどすべてが小惑星帯からはじき出されたものだという。大きい小惑星が衝突などによりバラバラになると、多くの破片を生じる。

 これらの破片は長期間にわたって太陽の光を大量に浴びる。「ヤルコフスキー効果」という物理学効果により、破片に吸収された放射が再放出されるときに、破片に小さな力を及ぼす。破片はこの力の影響を受け、たまたま地球の重力が届く場所に移動すると、衝突進路に入ることもある。(参考記事:「2182年、地球に小惑星が衝突?」

「何らかの原因により小惑星帯から多くの小惑星がはじき出されると、少し遅れて、地球に降り注ぐ隕石が増加します。その数は時間とともに徐々に減少していくでしょう」と、ボトキ氏は説明する。

 小惑星帯から多くの小惑星をはじき出したのは、数回にわたる小惑星帯の分裂かもしれないし、たった1度の大異変かもしれない。正解は将来のモデル研究によって明らかになるだろう。

 その原因が何であれ、衝突ペースの増加は、地球の過去の解明に興味を持つだけでなく、恐竜と同じ運命をたどることを回避したいと願う科学者にとっては、興味の尽きない研究テーマだ。

文=Robin George Andrews/訳=三枝小夜子

おすすめ関連書籍

宇宙の真実 地図でたどる時空の旅

宇宙の今が全部わかる!太陽系の惑星から宇宙の果て、さらに別の宇宙まで、どのような構造になっているのか、なぜそのような姿をしているのかを、わかりやすく図解で解き明かす。

定価:1,540円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加