【参考動画】シロアリのアリ塚の構造を応用した自然冷房
エアコンを使わない冷却システム。建築家ミック・ピアース氏が、生物模倣と呼ばれる手法でシロアリの知恵を活かし、ジンバブエ最大の商業ビルの自然冷却システムを設計した。(解説は英語です)

 グリフィス氏の研究チームは、シロアリ以外の生物は一切食べない毒入りのセルロースをまくことで、森の中から局所的にシロアリの数だけを抑制した。「本当にトイレットペーパーのようなものです」と同氏は話す。このセルロースをまいた後には、シロアリがほとんどいない生態系が残る。これを通常の生態系と比較することで、シロアリの正確な役割を解明した。(参考記事:「アリが「公衆トイレ」を持つと判明」

 干ばつが起きなかった年には、通常の区画とシロアリを抑制した区画との間に、大きな違いは見られなかった。しかし、干ばつが起きると、その差は歴然だった。落ち葉を食べるシロアリが多い区画では、土壌は乾燥せず、若木が芽吹き、森は過去20年で最悪の干ばつにもビクともしなかった。(参考記事:「農業を変えるか、土壌微生物の可能性」

「シロアリは、気候変動の影響を軽減する緩衝材のような役割を担ってくれるのです」と、米プリンストン大学の生態学者ロブ・プリングル氏は話す。なお、同氏は今回の研究には関与していない。

森の回復力の限界

 気候変動が進むにつれ、この地域の干ばつはさらに深刻になり、ボルネオの原生林がこれまで以上の脅威にさらされるだろう、とマリアウの森で長年研究を行ってきた英ヨーク大学の昆虫学者ジェーン・ヒル氏は言う。しかし、ボルネオ島を含め、世界中に残されている熱帯林のほとんどは、手付かずの完全な状態ではなく、その多くでシロアリの生息数が激減している。「多くの森が寸断され、劣化しています」とヒル氏は話す。「こうした森に、どの程度の回復力があるのかはわかりません」

 また、将来、気候変動の影響が強まれば、シロアリの働きだけでは十分でなくなるかもしれない。「シロアリが、本当に役立つ可能性を秘めていることは明らかです」と米プリンストン大学の生態学者カリーナ・ターニタ氏は言う。なお、同氏は今回の研究には関与していない。「しかし、気候変動のシロアリへの影響や、シロアリの効果の限度などは、わかっていません」

 一方、グリフィス氏にとって今回の研究成果は、ボルネオや世界中の熱帯林における生態系の相関関係について、まだまだ研究する余地があることを示すものだった。生態系におけるシロアリの真の重要性を明らかにできたのは、たまたま干ばつの時期に研究を行ったからに過ぎない、と同氏は語る。「私の頭の中で警鐘が鳴っています。まだまだ知らないことがあると考えるようになりました。人間が生態系を破壊し始めているのに、それがどんな影響を及ぼすかわかっていないのです」(参考記事:「気候変動、最新報告書が明かす5つの重大事実」

参考ギャラリー:虫の顔、驚きのクローズアップ写真 12選(画像クリックでギャラリーページへ)
カゲロウの仲間(Photograph by Yousef Al Habshi)

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