シロアリに「森を守る保険」の役割、実験で解明

干ばつになると倍増して土壌の湿度を維持、ボルネオ島で研究

2019.01.16
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霧が立ち込める熱帯雨林。インドネシア、ボルネオ島のグヌンパルン国立公園で撮影。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 シロアリが、危機に陥った熱帯雨林を守る「保険」のような役割を果たしていることが、最新の研究で明らかになった。

 シロアリは、森の掃除屋として落ち葉を食べ、トンネルを掘って土壌を換気し、生態系全体の「土木工事」を請け負っている。しかし、森の健全な機能を維持するうえで、どれほど重要な役割を果たしているかは、これまで正確にはわかっていなかった。

 英ヨーク大学の昆虫学者ハンナ・グリフィス氏の研究チームは、ボルネオ島、マリアウ盆地の特定の区域からシロアリを排除し、その影響を観察することでシロアリの役割を解明。研究成果を1月11日付けの学術誌「サイエンス」に発表した。(参考記事:「アリ塚と空調、自然に学ぶエネルギー」

 グリフィス氏らが実験を始めたのは、偶然にも2015年から2016年にかけての時期。エルニーニョ現象が発生し、森が極度の干ばつに見舞われていたときのことだった。研究チームが発見したのは意外な事実だった。シロアリが例年の2倍近くに大繁殖し、干ばつに見舞われた森を健全に保つ役割を果たしていることがわかった。シロアリが多い場所では、土壌の湿度が保たれ、より多くの若木が芽吹き、長期にわたる厳しい干ばつにもかかわらず、生態系に異常が見られなかったのだ。(参考記事:「珍現象:エルニーニョで砂漠が一面の花畑に」

「シロアリは、生態系にとって保険のようなものです」と、グリフィス氏は話す。結果としてシロアリは、気候変動のプレッシャーから森を守っているという。

シロアリのいない区画と比較

 シロアリの評判は悪い。米国では毎年、巨額のシロアリ被害が報じられ、インドの銀行では文字通りお金が食べられてしまったこともある。業界全体をあげてシロアリ駆除を目指す産業もある。

 しかしシロアリは、多くの自然の生態系において重要な役割を果たしている。熱帯林の落ち葉や枯れ木を食べて分解し、栄養を生態系に還元して、他の動植物が利用できるようにしていることは、何年も前から知られていた。だが、その役割を正確に解き明かすのは困難だった。森に積もった枯れ葉などを分解しているのは、シロアリなのか、あるいは土壌の微生物やアリなのか、またはそれらすべての共同作業なのかを判別できなかったからだ。

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