「女人禁制」の寺で参拝めぐり暴動、5800人逮捕

インド、最高裁の違憲判決と保守的信者が衝突

2019.01.10
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サバリマラ寺院の支持者によるろうそく集会。2018年9月に最高裁判所が全ての女性の寺院立ち入りを認めたことで、ケーララ州で抗議デモが多発している。(PHOTOGRAPH BY CHANDAN KHANNA, AFP/GETTY)
サバリマラ寺院の支持者によるろうそく集会。2018年9月に最高裁判所が全ての女性の寺院立ち入りを認めたことで、ケーララ州で抗議デモが多発している。(PHOTOGRAPH BY CHANDAN KHANNA, AFP/GETTY)

全ての女性の参拝を禁じてきたのか

 禁じられているのは、妊娠可能な年齢の女性だけだ。12月18日には、押し問答の末4人のトランスジェンダーが初めて寺院への立ち入りを認められた。女性参拝に向けた第一歩とも期待できるが、月経のある女性は「不浄」であるという差別意識を改めて強調する措置でもある。(参考記事:「曖昧になる男女の境界」

女人禁制の撤回運動が起きたきっかけは?

 初めて訴えが起こされたのは、最高裁判決からさかのぼること12年前。弁護士でインド若手弁護士協会の会長を務めるバクティ・パスリジャ・セティ氏と5人の賛同者が、2006年に裁判所へ申し立てを行った。

 きっかけは、女優のジャヤマラ氏が約20年前にサバリマラ寺院にこっそり参拝したことがあると告白したことだった。すると、寺院は遅まきながら「浄化の儀式」を行った。これに、セティ氏は衝撃を受けた。最高裁判所への訴状には、女人禁制だけでなく「不浄な」入場があった後の浄化措置も、人間の尊厳を損なうものであると書かれている。(参考記事:「夫に先立たれ、残された妻たちの苦しみ」

反対派が激しく抵抗したのはなぜ

 ある政治アナリストは、右翼のヒンドゥー教国粋主義団体が暴動を組織したとみている。なかでも、民族義勇団と呼ばれる団体は、中央政府で実権を握っているインド人民党の親組織だと考えられている。

 2019年の議会選挙を控え、最高裁の判決とそれを支持するケーララ州首相でインド共産党のピナライェン・ビジャヤン氏に反対することで、人民党は、自分たちが宗教の擁護者であり、インド社会の多数派を代表する党であると印象付けるのが狙いともいわれている。

ギャラリー:「女人禁制」の寺で参拝めぐり暴動 写真6点(画像クリックでギャラリーへ)
ギャラリー:「女人禁制」の寺で参拝めぐり暴動 写真6点(画像クリックでギャラリーへ)
ケーララ州警察の監察官事務所前で、警官に取り押さえられるデモ参加者。サバリマラ寺院への女性参拝をめぐる抗議デモで、5000人以上の逮捕者と100人以上の負傷者が出ている。(PHOTOGRAPH BY STR, AFP/GETTY)

今後の行方は

 最高裁判所は、判決の見直しを求める49件の訴えを受け、1月22日に審理を行うことに同意した。寺院は現在、女性の立ち入りを認めており、最新の報告では禁止されていた年齢層の女性10人が参拝を果たしたという。

 女性参拝を強く支持するダリット活動家のレカ・ラジュ氏は、参拝を希望する女性からの電話相談を週に数回は受けるという。「まだ障害はあるかもしれませんが、女性の間には期待感も広がっています」(参考記事:「【動画】インドのアフリカ系住民「シディ」の苦闘」

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文=Priti Salian/訳=ルーバー荒井ハンナ

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