インドネシアの火山津波 警報が出なかったわけ

多くの死傷者を出した津波は、地震ではなく火山活動が原因だった

2018.12.26
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2018年12月23日のインドネシア、カリタ地区。津波で破壊された建物を写した航空写真。(PHOTOGRAPH BY AZWAR IPANK/ AFP/ GETTY)
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これまでに判明したこと

 モデル実験で、さらに手掛かりを得ようとする試みもあった。独カールスルーエ工科大学の博士研究員であるアンドレアス・シェーファー氏は、波の到達時刻と同海域の地形を使って、どこで地すべりが起こったかを突き止めようとした。波の速さは、地すべりが流れ込む海の深さと波の高さによって決まる。これを基にシミュレーション・モデルを作成する。

 シェーファー氏のモデルは、地すべりが南東または南西に移動し、波は30~35分で陸に到達したことを示唆している。現時点で確認されているデータでは、波はジャワ島のアニエールに近いマリーナ・ジャンブへ最初に到達した。

 アナク・クラカタウ山は、津波発生の半年前つまり2018年6月から、大量の蒸気や溶岩などの火山噴出物をまき散らしていた。(参考記事:「ハワイに新島が出現、でも短かった命」

「地すべりが起こったとしたら、今年の噴火による火山噴出物が積もりに積もっていたためではないでしょうか」。米コンコード大学の火山学者ジェニーン・クリップナー氏は言う。「まだ断言はできませんが」

 または、過去数十年にわたって降り積もった火山噴出物が原因とも考えられる。研究者らは、2012年には既に火山の南側で巨大崩落が発生した場合の影響をモデル化し、それによって起こる津波が1分以内に高さ15~30メートルの巨大な波となって付近の島へ押し寄せると結論付けていた。

「つまり、以前からアナク・クラカタウ山では崩落と津波の危険性が指摘されていたわけです。ただ、いつ、どれくらいの規模で津波が起こるかまで予測できたとは限りません」

 確かに、過去の出来事を分析して未来のモデルを作成したとしても、地すべりが原因の津波を事前に察知して警報を発することはまだ難しい。2004年に発生したスマトラ沖地震と津波の後、地震による津波の早期警報システムに関しては数多くの研究がなされたが、今回の災害や今年初めにやはりインドネシアのパル付近で発生した突然の津波からもわかるように、まだまだ研究が必要とされる。(参考記事:「火山雷で辺境の噴火を監視できる可能性、最新研究」

「これだけ活発な火山になると、状況は時間とともに変化します。大変複雑なケースで、通常の津波警報と一緒にすることはできません。津波の前に起こる地震がないのですから」

 また、いざというときに効果的な対応ができるよう十分な財源も必要だと、クリップナー氏は付け加えた。「研究がもっと必要なのはもちろんですが、研究結果を政策や行動に生かせるよう資金と支援、そして協力が必要です」

ジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡に位置するアナク・クラカタウ山。小さな島々に囲まれていることがわかる。(PHOTOGRAPH BY GALLO IMAGES/ ORBITAL HORIZON/ COPERNICUS SENTINEL DATA 2018)
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文=Maya Wei-Haas/訳=ルーバー荒井ハンナ

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