インドネシアの火山津波 警報が出なかったわけ

多くの死傷者を出した津波は、地震ではなく火山活動が原因だった

2018.12.26
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2018年7月、アナク・クラカタウ山(アナク・クラカタウは「クラカタウの子」の意)の噴火で流出した溶岩。付近の島から撮影されたもの。(PHOTOGRAPH BY EL GHAZALI/ BARCROFT MEDIA/ GETTY)
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 2018年12月22日、現地時間午後9時27分、インドネシアのスマトラ島とジャワ島を突然の津波が襲い、甚大な被害が出た。事前に警報は一切出されなかった。今後行方不明者の安否が明らかになるにつれて犠牲者の数は増え続けるとみられるが、2018年12月23日時点で、死者220人以上、負傷者は800人以上の災害となっている。

 これだけの津波でありながら、警報が発せられなかった背景には、津波の意外な発生原因があった。過去に大きな被害をもたらした津波はほとんど地震が引き金だったが、今回の場合、海に面した火山の崩落が引き起こしたものとみられている。

 その火山こそアナク・クラカタウ山だ。アナク・クラカタウ山は、2018年6月18日から噴火活動を活発化させていた。津波発生にいたるまでの詳しい経緯はまだ調査中だが、今のところ、火山活動に関連した地すべりが引き金になった可能性が高い。欧州宇宙機関の人工衛星センチネル1の画像を見ると、12月22日に山の南側の大部分が海へ崩れ落ちていたことがわかる。

 地球物理学者のミカ・マッキノン氏は、珍しい出来事ではないと語る。「火山とは、何層もの岩が重なって、糊で緩く貼りあわされただけのようなものです。噴火が起こるたびにそれが少しずつずり落ちて、全ての層が下へ向かって傾いている状態なのです」。その一部が剥がれ落ちるのに、大した力は必要としない。剥がれ落ちた塊が大きければ、何の予兆もなく巨大な波が発生することもある。

「池に小石を投げ入れると波紋が広がるのと同じです。その規模が破壊的な大きさになったのが今回の津波です」と、マッキノン氏は説明する。

津波の原因

 津波と聞いて、まず思い浮かぶ原因が地震だろう。事実、これまで観測された破壊的な津波の原因のほとんどが地震によるものだ。海底地殻の活動が、その上にある海水のかたまりを動かして波を作り、それが幾重にも重なって陸地へ押し寄せるのが津波だ。

「しかし、津波の原因はそれだけではありません」と、マッキノン氏は言う。氷河の崩落や地すべり、火山噴火も巨大な波を引き起こす。(参考記事:「活動続くキラウエア火山、巨大津波の心配は?」

 今回の津波の原因とされるアナク・クラカタウ山は、1883年のクラカタウ山大噴火によって誕生した山である。近代では最大規模の噴火で、4900キロ離れたロドリゲス島まで音が響いたという。このときにも津波が発生し、3万6000人を超える死者が出ている。ちなみに、この噴火はエドヴァルド・ムンクの絵画「叫び」の創作へ影響を与えたともいわれている。噴火がおさまると、巨大な火山性のクレーターが残された。

「それでクラカタウは死んでしまったわけではありません。新たな火山が成長し始めていました」。新しく形成された子火山がアナク・クラカタウ山(「クラカタウの子」という意味)と名付けられた。

 地震が原因の津波であれば、発生を事前に予測できる。しかし、地すべりで地震波は発生しない。ただ、今回の津波では、前後に低周波の地響きが検出されており、これが津波の原因が地すべりだったことを示唆しているのだ。(参考記事:「【動画】奇怪!「呼吸」する道路を撮影」

 低周波シグナルについては最近研究が本格化していて、地下深くのマグマ活動やマグマ溜まりの崩壊といった火山活動のほか、氷河の崩壊や海底地すべりの際にも、低周波のシグナルが出ることが確認されている。

 英国地震掲示板の創始者ジェイミー・グーニー氏は、ツイッターのダイレクトメッセージで、「シグナルはミャンマーの首都ネピドーや、ジャワ、スマトラ、ボルネオで検出された」と回答した。また、ロシア、ウラル地方の町アルチや、西オーストラリアのカンバルダにまで低周波は届いていた。

2018年12月23日、津波に襲われたインドネシア、ランプン州でがれきをかき分ける人々。住宅は破壊され、多くの住人が亡くなった。(PHOTOGRAPH BY RIAU IMAGES/ BARCROFT MEDIA/ GETTY)
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次ページ:たまった火山噴出物が地すべりを誘発か

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