アホウドリのエサは魚であり、毒入りのエサや、毒を食べたネズミを食べるとは考えられない。しかし、カオグロサヤハシチドリなど、同島で越冬する腐肉を食べる鳥が毒を口にする可能性はある。こうした種を守るために、別の研究者チームが、毒が完全に消えるまでの間、彼らを一時的に捕獲・飼育することになっている。

 こうした予防措置は安く済むものではない。「一日ごとに、高額な燃料と貴重な時間が費やされます。計画は細部までしっかりと詰めなければなりません」とワンレス氏は言う。

ひなに雨がかからないように覆いかぶさるワタリアホウドリの親。マリオン島では雨は珍しくない。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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本来あるはずのない脅威

 多額の費用がかかろうとも、この根絶計画には価値があると、保護活動家らは考えている。米テネシー大学の生態学者ダン・シンバーロフ氏は、計画の影響がほかの種に及ぶ危険性もあるとしつつ、こう述べている。「悲惨なアクシデントが絶対に起こらないとは言えません。しかしその可能性は低く、一方でネズミは現に大惨事を引き起こしているのです」(参考記事:「外来種の駆除を保全の目的にしてはならない理由」

 ワンレス氏も同様の意見だ。氏は根絶計画が成功することを確信しており、その過程でいくらか鳥が死んだとしても、結果として得られるネズミのいない生態系には、それだけの価値があると述べている。アホウドリの数はまた、すでに世界中の商業漁業の影響によって減っている。はえ縄漁の釣り針にかかって命を落とすアホウドリの数は少なくない。「アホウドリは海で散々な目に合わされ、繁殖しようとすればネズミにひなを食べられるのです。本来あるはずのない脅威は取り除いてやるべきです」とワンレス氏は言う。(参考記事:「海鳥の危機、過去60年で70%も減っていた」

 毒を撒いた後、研究者らは2年間様子を見て、作戦がうまくいったかどうかを見極めることになる。そのときようやく、頭皮を剥がされる海鳥がいなくなったかどうか、また昆虫の数が復活したかどうかが判明するだろう。そうした証拠が得られるまでは、ただ待つしかない。

 計画の成功を期するペシャック氏は、最終的な結果は、一つの島の運命を決める以上の意味を持つと考えている。「もしマリオン島のような自然のままの離島が救えないとすれば、他の場所について、どんな希望がもてるというのでしょうか?」

ギャラリー:世界の美しい鳥たち7 写真31点(写真クリックでギャラリーページへ)
インカアジサシ Jacksonville, Florida, United States(Photograph By Marcelo M., National Geographic Your Shot)

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文=LESLIE NEMO/写真=THOMAS P. PESCHAK/訳=北村京子