根絶計画始動、海鳥を生きたまま食べる外来ネズミ

絶滅危惧種の海鳥を保護、生物多様性に富む南アフリカ、マリオン島

2018.12.19
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【閲覧注意】生きたままネズミにかじられる海鳥のひな(刺激的な映像を含みます)

 おかげで、ネズミは海鳥のひなに容易に近づける。たとえば、アホウドリのひなが卵から孵って2カ月が過ぎると、親鳥たちはエサを探す長い旅に出る。そのためひなたちは約7カ月の間、無防備なまま留守番をすることになる。親鳥がひなにエサをやりに戻ってくるのは週に1度、1〜2時間のみだ。これではひなを守ることは難しい。

 ひなたちが、鳥類学者たちが「かじり」(ペシャック氏はこの言い回しについて「生ぬるすぎる表現」だと述べている)と呼ぶ行為によって命を落とすまでには、数晩かかることもある。2015年には、アホウドリのひなが死んだ事例のうち、ネズミの捕食によるものは全体の10パーセントにのぼった。こうした攻撃にまったく対処した経験のないアホウドリは、身を守るすべを持たない。ひなたちは一晩中眠ることもできないままネズミにかじられ、日中はボロボロになった体をなんとか回復させようと努める。

 一方、親鳥が比較的近くにいることが多い一部のミズナギドリの場合、親鳥たちはあぜんとして、ネズミの攻撃をただ見守っている。「それはまるで、ゾンビの襲撃を受けているような光景です」とホワイトヘッド氏は言う。(参考記事:「固有種に返り咲いた小笠原の海鳥」

マリオン島南部のグレイヘディッド尾根では、ネズミによる捕食が活発に行われている。写真は尾根に登ってネズミに食べられたアホウドリを探す鳥生物学者のオットー・ホワイトヘッド氏。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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1メートル四方ごとに毒入りのエサが必要

 ネズミを撃退できない鳥たちのために、保護活動家らは、自らその役割を引き受けることを決めた。バードライフ南アフリカの鳥類学者ロス・ワンレス氏は、2020年の毒撒き計画を先導する研究者の一人だ。

 東京都区部の半分ほどの広さの島の上を、ヘリコプターがマス目を辿るように飛びながら、1平方メートルごとに毒入りのエサを一つずつ落としていく。ネズミはエサのために遠出をしないため、理論上、この方法ですべてのネズミを網羅できる。しかし、もしエサを撒きそびれた場所が20メートル四方もあれば、少数のネズミが生き残って繁殖し、計画全体が台無しになる。

 ヘリのパイロットはまた、激しい天候にも対処しなければならない。マリオン島周辺の海では、容赦のない暴風が吹く。

 毒は、ネズミを惹き付けるために穀物の中に仕込まれる。毒を食べたネズミは死に、残った毒は検知されないレベルまで劣化して、海に流れ込む。

ギャラリー:史上最大規模の外来ネズミ根絶プロジェクトに成功 写真8点(写真クリックでギャラリーページへ)
サウスジョージア島の絶滅危惧種を脅かす外来種のネズミを駆除するため、ネズミの餌が入った容器に毒を混ぜる作業員。(PHOTOGRAPHY BY TONY MARTIN, SOUTH GEORGIA HERITAGE TRUST)

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