装甲車のような恐竜ズール、頭と尾の化石を公開

ティラノサウルス類に傷を負わせた容疑者、ただいま全身クリーニング作業中

2018.12.20
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ギャラリー:装甲車のような恐竜ズール、強力な尾や装甲 写真5点
尾の先端の骨が、幅60センチほどのこぶのように膨らんでおり、捕食者や同種の仲間を撃退していたと考えられている。そこからズールには「すねを破壊するもの」という意味の「クルリバスタトル」という名がつけられた。(PHOTOGRAPH MARK THIESSEN)

映画『ゴーストバスターズ』にちなんで

 ズールがカナダにやってきたのは、アーバー氏にとって思いがけない幸運だった。化石が到着した直後から、2年間にわたる調査を開始することになった。エバンス氏とともに頭骨や尾骨を研究する中で、この恐竜がアンキロサウルス類の新種であることを明らかにした。

 2人は新種の種名に「クルリバスタトル」という言葉を選んだ。ラテン語で「すねを破壊するもの」という意味で、この恐竜の尾についている武器にちなんだものだ。角のような突起が1984年の映画『ゴーストバスターズ』に登場する番犬「門の神ズール」を思わせることから、属名はズールとした。この名前を学名として記載するにあたり、エバンス氏はある友人の賛同を求めた。『ゴーストバスターズ』の脚本に関わり、出演もしたダン・エイクロイド氏だ。熱心な古生物ファンであるエイクロイド氏は、よろこんで同意した。

 一方で、ズールの体を覆っていた20トンの岩塊は、RCI社の倉庫に運びこまれた。運搬さえ一苦労で、この砂岩を運ぼうとしたフォークリフトが駐車場で倒れてしまったほどだ。

 2018年1月になってから、ようやくズールの背骨と胸郭を取り出す作業が開始された。その8カ月後には、背中の装甲に取りかかる準備ができた。そのためにRCI社は岩塊を半分に切断し、8トンほどの岩を裏返した。

 それ以来、標本の抽出を担当しているアメリア・マディル氏らが、装甲を掘り出す骨の折れる作業を進めている。5人の女性からなるこのチームは、この発見の重要さを誰よりもよく知っている。「岩塊が到着したとき、父にそのことを話しました。人生をかける仕事がここにあるのよ、と。すばらしい仕事です。現実とは思えません」

 ズールがあまりに現実離れしているためか、RCI社の予定は遅れている。マディル氏のチームの作業が終わるのは、早くても2018年末だ。化石の科学的な分析はそれからになる。恐竜に由来するタンパク質の化学的調査などが行われる予定だ。(参考記事:「最古の恐竜のタンパク質を発見」

 ロイヤル・オンタリオ博物館には、アクリル樹脂のケースに入れられたズールの頭骨が展示されている。新しい展示の主役であることは誰もが認めるところだ。口を大きく開け、つねに眉をひそめたような表情をじっと見つめていると、にらみ返されているようにすら感じる。この恐竜が生きていた7600万年前の日常を感じられるようだ。このあごで、中生代の植物を食べていたのだろう。骨ばったまぶたの下の目は、失われた世界を見つめていたに違いない。

 見れば見るほど、陳列ケースや説明書きが消えていくようだ。ここには現在はない。化石の時代に舞い戻った私の目の前には、ズールだけがいる。

参考ギャラリー:決定版!保存状態の良い恐竜化石たち 写真23点
恐竜研究の歴史を飾る、謎と美しさに満ちた化石や復元模型の写真を選りすぐって紹介する。 (PHOTOGRAPHY BY GERD LUDWIG)

文=MICHAEL GRESHKO/写真=MARK THIESSEN/訳=鈴木和博

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